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笹岡隆甫氏 四季守る 伝統文化から発信
ささおか・りゅうほ 1974年、京都市生まれ。3歳から当代家元笹岡勲甫の指導を受ける。2000年、京都大大学院博士後期課程中退。著書に『美的生活のヒント』。

 京都の街に身を置けば、清少納言が見た、まさに同じ景色を味わうことができます。京都には、古典文学の世界が、今も確かに息づいています。しかし、このまま環境破壊が進み、日本の四季が失われると、枕草子は現実離れした昔話になってしまうのです。
 これは文学に限ったことではありません。織物や染色といった伝統工芸から、能や狂言などの舞台芸術、茶道や華道のような生活文化に至るまで、四季を題材にした伝統文化は、すべて意味をなさなくなります。これは日本人にとって、とても寂しいことですね。
 美しい地球を次世代に伝えるのは、私たちの世代の役目。しかし、環境問題を声高に叫ぶと、どうも重苦しく、つい敬遠されがちです。
 肩肘はらず、身近に環境を考えられるきっかけを作りたい。私がそんな想いで立ち上げたのが、「DO YOU KYOTO? ネットワーク」です。
 同世代のよき先輩でありよき仲間である、池坊由紀、千宗員、千宗屋、藪内紹由各氏ら、伝統文化の若き継承者に呼びかけて発足。2月には、初イベントを行いました。
 「説教くさいものはダメ。洗練された舞台を見せよう」
 伝統文化の粋が詰まったステージをご覧いただく中で、自然の美しさを見直し、次世代に残したいと感じてほしい、と考えたのです。伝統文化に触れる機会が少ない方にも見ていただけるように、あえて、人の出入りが多い京都高島屋1階を会場に選び、能舞台をイメージした特設舞台を組みあげることに。
 イベント当日。私は、海と月をモチーフにした三木啓樂さんの漆の花台に、雨上がりの空を表す諏訪蘇山さんの青瓷(せいじ)の壷(つぼ)を合わせ、2メートル以上もある苔(こけ)むした梅の古木を次々といけあげていきました。この大きないけばな作品を舞台装置に見立て、橋本忠樹さんが仕舞、井上葉子さんが京舞を披露。凛(りん)とした美しさを持つ白梅の枝越しに、あでやかな能装束を身につけたシテ方が舞う姿は何とも品格があり、観客の皆さまからは思わず感嘆のため息がもれていました。当日の模様は、近々、テレビでも紹介される予定です。
 ともあれ、京都からの発信は、今、はじまったばかり。引き続き、小学生向けの教育プログラムや首都圏でのイベントを計画中ですが、発信の場はまだまだ少ないのが現状です。京都から全国へ、そして世界へと、活動の舞台を広げ、私たちの踏み出した小さな一歩を、大きな流れにしたいものです。
(華道未生流笹岡次期家元)

[京都新聞 2010年05月23日掲載]