ソフィア 京都新聞文化会議 京都新聞電子版へ

笹岡隆甫氏 カスミソウのような人に
笹岡隆甫氏 ささおか・りゅうほ 1974年京都市生まれ。京都大工学部建築学科卒。京都ノートルダム女子大客員教授。京都いけばな協会理事。近著に『いけばな』(新潮新書)。

 最近、花を贈りましたか?
 バラやユリなど人気の花たちが、旬を迎えています。母の日や父の日などが続き、花を贈る機会も多い季節です。
 私が母親に花束をプレゼントするのは、自分自身の誕生日。「生んでくれてありがとう」という気持ちを込めて。ただし、これは私の発案ではなく、家内が結婚前から実践していたのを真似たもの。
 生花店に足を運び、みずみずしい季節の花たちを見ているだけで気持ちが弾みます。相手のことを思いながら花を選んでいると、おのずと心が和みませんか。
 豪華なバラの花束も素敵ですが、私はたいてい、小ぶりの花を各1本、10種類ほど選び、茎は短く切らずに長めのままラッピングしてもらいます。定番は同系色のグラデーション。紫のアゲラタム、淡紫のリューココリーネ、空色のブルーレースフラワー、真っ白のホワイトスター…といった具合です。淡い色を多めに使うと優しい印象に。リキュウソウやスマイラックス、ミスカンサスなどのグリーンを入れるとすっきり仕上がります。
 そして最後に必ず加えるのが、白くて小さな花を無数に散りばめて咲くカスミソウ。花束全体を覆うようにふわっとかぶせておけば、調和よくまとまります。ちなみに、グリーンと白は、どんな花と組み合わせても失敗のない特別な色です。
 このカスミソウ、いけばなでもその役割は重要です。例えば、奇抜な色の花を単独で用いるのは、好みが分かれるところですが、そこにカスミソウを添えると、色の濃さが和らぎ、なじんできます。まるで水しぶきがかかったように、生き生きとして見えるのだから不思議。とにかく、他の花との相性が抜群なのです。
 私の目標は、カスミソウのような人。いつもそばにいて、その人と顔を合わせたらなぜか元気が出る。他人を笑顔にする、幸せにする。あなたの周りにもそんな人がいるでしょう。
 誰をも魅了する輝きを放つ大輪のバラはもちろん憧れだけれど、花の持つ美しさを際立たせることを仕事とする華道家は、同じ役割を果たすカスミソウに共感するのかもしれません。
 隣にいる人を大切にできないようでは、社会や地球は語れません。記念日でなくってもいい。家族や大切な人に花を贈りましょう。
(華道「未生流笹岡」家元)

[京都新聞 2013年06月02日掲載]