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(3)時報鐘の響き

城下町に広がる 心地のよい音色
「暮れ六つ」の鐘。たそがれゆく空と街並みに、長い余韻が響く
 人の背丈ほどある巨大な鐘の前に職員が立つ。上半身を反らせて綱をぎりぎりまで引いた後、体重をのせて太い胴木を一気に打ちつけた。重く大きな音色は、そばに立っていても耳をふさぐような不快感はない。柔らかで心地よく、やさしい振動が体を包む。
 時報鐘(じほうしょう)は、城下町のすみずみまで響くよう、城山の中腹にある。午前六時に六打、正午に十二打と、時刻の数だけ三時間ごとに一日五回鳴らされる。ビルが立ち並び、車が行き交う現在の市街地で、鐘の音はどこまで響いているのだろうか。
 旧城下町の外れにあたる芹川の左岸堤防(中薮町)に立った。鐘の位置からは一キロ近く離れている。鐘を打つ姿は見えないが、正午のサイレン音に混じって一打目が響いた。車がそばを通った七打目をのぞき、九分十秒かけて十二回打ち鳴らされるのをはっきりと聞き分けることができた。
 午前六時、同じ位置に立つ。夜明け前の街並みを澄んだ空気が包んでいる。打ち鳴らされた鐘の音は、長く尾を引いて消えゆく余韻まで、いっそう美しく響いた。
【2007年3月20日掲載】