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(5)巨大な堀切

巧妙な仕掛けで敵軍を誘い込む
恐怖の谷底。戦国から近世の築城技術が集大成されている
 表門から六十数段の石段を上ると、頭上に高くそびえる石垣と櫓(やぐら)、橋が目に入る。映画などの撮影もたびたび行われ、城内を代表する建造美として観光ガイドで紹介されることも多い。
 山をV字谷に削った防御構造を「堀切(ほりきり)」と呼ぶ。城郭研究者の中井均さんは「近世城郭でこれほど巨大な堀切は類をみない」と話す。巧妙な仕掛けも施されていた。写真の撮影位置にはかつて櫓門が築かれ、前方の視界を遮っていたという。
 そのことを思い浮かべて城を攻める将兵の視点に立つと、美しいどころか足がすくむように恐ろしい光景へと印象が一変する。
 たちふさがっていた門を突破した軍勢は、この場所になだれ込んで初めて、わなに誘い込まれたことに気づく。あり地獄のような谷底で身を隠すことができず、反撃しようのない高所から狙い撃ちされる。
 たとえくぐり抜けても、櫓や曲輪(くるわ)が何重にも控える。表門からわずか十数分で見物できる天守閣も、攻め手にとっては到底たどりつけそうにないことを実感する。
【2007年4月3日掲載】