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(9)埋木舎の柳

葉陰を落とす姿に直弼の人間像映
井伊直弼は、しなやかな柳の姿に生き方の理想像を重ね合わせた
 幕末期に幕府大老を務めた十三代彦根藩主井伊直弼は、朝廷の許しを得ずに通商条約に調印し、反対派を弾圧した末に暗殺されるなど、負の側面が伝わりがちだった。
 このほど横浜市で開かれたイベント「開国カンファレンス」では、大きな視野に立って開国を決断し、日本を近代化に導いた直弼の業績にジャーナリスト田原総一郎氏や研究者が光をあてた。
 不遇だった青年期に禅や武芸、茶道を極め、外国の事情にも精通した。根本原理を重んじながらも、柔軟に物事をとらえることを究極の理想としたという。柳をこよなく愛し、雅号を「柳王舎(やぎわのや)」と称した。風に揺れながらも、倒れることはないたたずまいに、生き方を重ねた。
 直弼が藩主になるまで過ごした「埋木舎(うもれぎのや)」は、中堀沿いの尾末町で公開されている。質素で枯れた風情の門をくぐると、柳の老木がそびえている。桜が散るのと入れ替わるように青々とした葉が茂り始めた。さわやかな風にそよぎ、濃い葉陰を落とす姿に、激動の時代を生きた直弼の人間像が伝わってくる。
【2007年5月1日掲載】