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(11)湖東焼の盛衰

高い技術力魅力 悲運の足跡紹介
 直径十一センチの小さな器に、細密画のようにびっしりと竜や文様が描かれている。幕末期に彦根藩で繁栄した湖東焼の技術力と美術性の高さを示す。
 写真奥にある器の素地は、青みがかった乳白色をしている。透き通るように白い有田焼とは対照的な、彦根で産出した釉薬(ゆうやく)の特徴を表す。湖東焼の盛衰を描いた京都新聞の連載小説「藍色のベンチャー」(幸田真音作)の題名は、この素地の色を指している。
 一八二九年に商人絹屋半兵衛が始めた湖東焼は藩営となり、十三代藩主で大老の井伊直弼の時代に全盛期を迎えた。開国や倒幕をめぐる複雑な情勢のもと、公家や他藩への贈答品として政治的にも用いられたが、直弼が暗殺されたことで急速に衰退する。
 中堀沿いの本町一丁目にある美濠(みほり)美術館では、湖東焼四十数点と直弼直筆の下絵を九月半ばまで展示している。失敗を重ねながらも技術を模索した時期から作風を確立し、途絶えるまでの足跡をたどることができる。時代の荒波を受けた悲運の焼物の魅力を今に伝えている。
【2007年5月15日掲載】