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(13)往時の楽々園

叙情と気品漂う日本画家の作品
克明ながらも美しさをたたえる上田さんの作風に、彦根のまちと歴史への愛着がにじむ
 江戸期から商人のまちだった橋本商店街の商店「自然の布館よりーな」で、日本画家上田道三さん(一九〇八−八四)の大作「槻(けやき)御殿旧景」が展示されている。
 二重櫓(やぐら)や壮麗な門、能舞台などが並び、槻御殿とも呼ばれた彦根藩の下屋敷「楽々園」が克明に描かれている。落ち着いた色調に、叙情的なたたずまいと気品が漂う。
 遺族から作品を寄贈された市教委によると、現在の十倍の規模に及んだ彦根藩十一代藩主井伊直中隠居時の様子が忠実に再現されているという。文化財担当者は「私たちが言葉で説明を尽くすより、往時の姿を見事に伝えている」と話す。
 文展や日展に入選歴のある上田さんは、彦根城や武家屋敷の姿を膨大な作品に残し、県文化功労賞を受けた。「よりーな」経営者で上田さんのめいにあたる平居圭子さん(七三)は、上田さんが城内外をくまなく歩いてスケッチしただけでなく、足軽屋敷跡に構えた工房で文献に囲まれ作画に打ち込んだ姿を記憶している。「だれよりも彦根を愛し、画業に妥協がない人でした」と話している。
【2007年5月29日掲載】