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業界から不満噴出

「規制根拠が不明確」 要望書を市に提出
京都府宅地建物取引業協会での説明会。新たな高さ規制への批判が集中した(京都市上京区)
 建築物の高さや屋外広告物の規制を大幅に見直す京都市の新景観政策に対し、影響を受ける業界団体から不満の声が出始めた。府宅地建物取引業協会(上京区)で十九日に開かれた市の説明会で「規制の根拠が明確でない」などの意見が相次いだほか、全日本屋外広告業団体連合会(日広連)など五団体も同日、新景観政策の見直しを求める要望書を市に提出した。
 新景観政策は、古都・京都の景観保全に向け、市域のほぼ全域で高さ規制を強化するほか、屋外広告についてはビル屋上の看板設置を禁止し、点滅照明の広告物も全面禁止する。市は来年の二月市議会で関連条例を改正し、来年度早期に実施していく方針で、市民の意見を募り、業界団体などを対象に説明会を開いている。
 高さ規制の強化に伴い既存不適格となる建物が出るとみられ、資産価値が下落する可能性もある。このため、府宅建協会での説明会には、府内の会員約二百人が出席。市の説明に対し、「業者への影響を考えているのか」など疑問や不満の声が上がった。同協会は、近く規制強化の先延ばしを求める要望書を、市に提出する。
 また、屋外広告物の減少も避けられず、日広連のほか、全日本ネオン協会、京都府広告美術協同組合など関連五団体は「制限は極めて厳しい」「性急な規制導入は疑問を」「地元商店街などの意見はどのように反映されたのか」などと訴え、実施の先延ばしを書面で求めた。

京都市の新景観政策に「待った」

 「規制の強化は死活問題だ」。古都の景観を保全する京都市の新たな景観政策に対して、不動産や広告関連業界から批判の声が噴出した。十九日に府宅地建物取引業協会を対象にした市の説明会でも反発は激しく、建築物の高さ基準引き下げや屋上看板の全面禁止など規制強化だけでなく、導入までのプロセスにも向けられている。市議会でも与党から「異論」が出るなど、来年二月に条例関連の改正を目指す市は、厳しい局面に立たされそうだ。
 「不動産の価値が下がるのを理解しているのか」「なぜそんなに急ぐのか」
 十九日午後、京都市上京区の府宅地建物取引業協会であった新景観政策の説明会は約二時間半に及んだ。市を批判する意見が出るたび、会場から大きな拍手が起きた。
 府内の不動産取引業者など約三千社が加盟する同協会では、当初、説明会の参加者は百人程度と見込んでいたのに倍の約二百人が参加し、関心の強さを示した。
 市の担当者は、都心部の「田の字」地区で高さ規制を四十五メートルから三十一メートルに引き下げるなど新景観政策を説明。「日ごとに町家が消えるなど京都の魅力が喪失しており、時間との戦い」と訴えた。
 しかし、高さ規制が見直されると、規制に合わない既存不適格マンションが出る。市内全域で千八百棟が不適格になるとみられている。出席した会員は「不適格物件は金融機関がローンを認めず、売買できない」などと非難し、「今すぐ撤回せよ」「業者切り捨てだ」と厳しい声が飛んだ。
 一九九四年に完成した京都ホテル(中京区、現京都ホテルオークラ)で市は、四十五メートルに規制された高さを六十メートルまで認めるのに、総合設計制度の導入を認めた。この経緯を取り上げ、「市の姿勢は行き当たりばったりだ」との非難も出た。
 同協会の野口一美会長は「資産価値の下落に市が補償しないのもおかしい。せめて半年ぐらいは遅らせる猶予が必要」と述べたが、強硬に反対する意見も目立ち、妥協点はなかなか見いだせそうにない。
 屋上広告や点滅照明の広告が全面禁止になる広告業界も黙っていない。同じ日、東京などから全日本屋外広告業団体連合会など五団体の代表が市役所に訪れた。「屋上の全面撤去は暴挙だ」「死活問題にかかわる」などの直訴が続き、「無許可の違反広告を取り締まるのが先。まじめに申請する正直者が損をする」と批判一色となった。
 京都府広告美術協同組合の上出晧一郎理事長は「規制は一方的で寝耳に水。何もかも思い通りにしたいのではないが、仕事が減るのが一番心配だ」と困惑の表情を浮かべた。
 新景観政策は、十一月の「時を超え光り輝く京都の景観づくり審議会」答申を踏まえた。業界団体は委員構成にも不満で、「宅建業協会から委員が出ていない」「広告のプロがいない」と疑問の声も出た。
 市議会でも議論を呼び、自民党など与党市議から「拙速だ」などの批判が出始めた。来年四月に市議選を控え、宅建業協会の幹部も「市議にお願いし、反対してもらう」とプレッシャーをかける構えをみせる。
 来年二月議会での条例改正に向け、市幹部は「五十年先、百年先の京都を考えると今、景観保全に取り組まねばならない。既存不適格の解消には支援策も用意する。なんとか議員を説得していく」という。
 だが、利益が絡む問題だけにどう理解を得るのか。「市民に納得してもらうには五年は必要」との声を受け入れれば、景観保全は遅れる。市が来年度に導入するために、乗り越えなければならない壁は極めて高い。
【2006年12月20日掲載】