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新景観政策の概要

市中心部 最高31メートルに引き下げ 2月議会で審議へ
高さ規制見直し案
 京都市が新年度早々、規制強化によって京都らしい眺望を整える新景観政策の導入を目指している。関連条例は、二月定例議会で審議される。その内容は、大きく三つに分かれる。最高四十五メートルまで認めてきた建築物の高さを三十一メートルに引き下げるなど市街地の約三割エリアで高さを抑えること、「京都らしい」町並みの形成に向けて屋外広告物の面積や派手な色調を抑えるなどデザイン基準を見直すこと、さらに世界遺産など特定の場所に「視点場」を新たに設定し、そこからの眺望を乱す建築物に規制の網をかぶせること−その概要を紹介する。

<導入のポイント>
 京都市は、新景観政策の導入に向けて、高さ規制の特例許可手続きを定めたり、視点場設定など眺望保全の2条例を新たに設けるほか、屋外広告物、市街地景観整備、風致地区、自然風景保全の4条例改正案を議会に提案する。高さ規制強化やデザイン基準の見直しは、都市計画や景観計画の変更が必要になり、都市計画審議会と美観風致審議会に諮る。

◆高さ 6段階に再編

美観地区「旧市街地型」の景観整備イメージ図
 市内に設けている十メートル、十五メートル、二十メートル、三十一メートル、四十五メートルの五段階の高さ規制を改め、四十五メートルを廃止、新たに十二メートル、二十五メートルを追加して六段階に再編する。旧市街地を中心に市域の約三割で、高さ規制が現行より一段階、厳しくなる。
 例えば、中心区である「田の字地区」の幹線道路沿道は四十五メートルから三十一メートルに引き下げられ、地区内のいわゆる「職住共存地区」も、三十一メートルから十五メートルに規制が強化される。
 今出川、丸太町、堀川、西大路、九条の各通など主要幹線道路沿道も三十一メートルから二十五メートル、もしくは二十メートルに改めるほか、北山、北大路、白川の各通、国道9号など山並みに近い幹線道路沿道は二十メートルから十五メートルに引き下げる。上賀茂や岩倉、西賀茂などの生活幹線道路沿道も十五メートルから十二メートルにする。
 住宅地でも大宮、鹿ケ谷、紫野など三山の山並みに近接している地域は、高さ二十メートルのゾーンは十五メートル、十五メートルは十二メートルに見直し、鴨川、桂川など川沿いも同様の基準を適用する。世界遺産の仁和寺や醍醐寺、上賀茂神社周辺はさらに低く抑えられ、十二メートルから十メートルに見直す。
 右京区など西部の工業地域は三十一メートルから二十メートルに引き下げ、南区や伏見区の南部工業地域はこれまで規制がなかったが、新たに二十メートル規制を導入する。ただ、工場や事務所は現行の三十一メートルを認める。
 このほか、ビルの屋上に設置されている塔屋の高さも現行「八メートル以下」を「三−四メートル以下」に改め、屋上形状もこう配屋根設置を誘導していく。
 新規制の導入によって、最高十四、五階のマンション建設が可能だった田の字地区では、十一階程度までしか建たなくなり、堀川通や今出川通など幹線道路沿いの建築物も十一階建てから八階建てに抑える。不適格となる既存建築物も将来、建て替えを促していく。
 デザインが優れた建築物には、規制を一段階緩める規定を設けるが、おおむね各地域で均整のとれた高さの建築物が連なるように町並みを誘導していく。中心区から三山に向かってなだらかな円すい状に低層の建物が広がるイメージで、「四十五メートルを三十一メートルに下げることで、三方の山並みへの眺めや隣接する町並みと調和する」と市は説明している。

◆デザイン 禁止色設定も

 北大路、東大路、九条、西大路の各通に囲まれたいわゆる旧市街地の南西部を除く地域は美観地区に指定されているが、新たに南西部を新設の美観形成地区に指定し、けばけばしい色彩の排除など同様の規制を行う。従来の第一−第五種の区分から「山並背景型」「旧市街地型」「歴史遺産型」など八類型六十地区に細かく再編。同地区と連なる北部、西部で指定されている建造物修景二種のエリアも、山科区や伏見区にも拡大して四類型十六地区に見直す。
 これに合わせ、類型ごとに地域特性に応じてデザイン基準も細かく設定し、外壁の色彩基準をより明確にするため、商業デザインなどに用いられる「マンセル値」による「禁止色」を数値で設定する。具体的には、土や自然素材に多い「赤」、「黄赤」、「黄」の色相を基準色とし、赤や青、紫など原色にグレーを混ぜたようなくすんだ感じの色彩を演出し、派手さを抑える。建築物の高さに応じ低層、中層、高層の三段階に分け、素材や形、意匠などデザイン基準も設定する。
 また、工作物の形態や意匠基準を見直し、建築物の類型別基準と同様のデザイン基準を採用するほか、美観を損なう携帯電話のアンテナ設置基準も一部見直す。緑地率を高めるため、美観地区の山すそや鴨川など河川沿いの住宅などで、川沿いに木を植えることも義務づける。
 美観地区のうち、山麓(さんろく)型や岸辺型、歴史遺産型など地域では、こう配屋根を原則義務づけ、瓦や風情のある金属板を求める。クーラーの室外機などに格子など目隠しの設置も求める。
 三山やその山すそには、高さやデザイン規制が最も厳しい風致地区に指定されているが、金閣寺や仁和寺や上賀茂神社など世界遺産周辺など十カ所(百二ヘクタール)を加え、風致地区面積を一万七千九百三十三ヘクタールに広げる。
 屋外広告物も現行九種類の規制区域を二十一種類に再編。建築物の高さ規制に合わせ、定着型広告物の高さ上限を引き下げる。
 例えば、四十五メートルから三十一メートルになる田の字地区では、広告物の高さも三十一メートル以下から二十メートル以下にする。支柱などに掲げる独立型もこれまで最高十メートルから六メートルに下げる。広告の面積も、河原町など沿道では一個当たり現行八十五平方メートルから五十平方メートル、職住共存地区では五十五平方メートルから十五平方メートルに下げるなど、市内全域で規制を強める。
 ビルなどの外壁面積に対する広告の表示面積も見直し、既存表示率をおおむね各地域で約5%縮小する。屋上の広告物や点滅式照明は、三山や山すその世界遺産周辺で禁止してきたが、これを市域全域に広げる。新基準の導入に伴い基準に合わなくなる広告は最長七年間は存続を認めるが、その後、撤去を求める。

◆視点場 特定眺望守る

鴨川沿いの視点場から「大文字」を眺めたケースのイメージ図
 世界遺産に登録されている十四社寺を含む三十八カ所からの眺望景観や借景を保全するため、境内や庭園、水辺など八種に分けた「視点場」を設け、そこからの眺めを阻害する建築物の高さやデザインを規制する。視点場から見えるエリア(視対象)内で、高さ規制の範囲内で建築物を建てても眺望を乱す場合、「視点場」からの規制でチェックする。例えば、鴨川や桂川など八カ所の視点場から「大文字」などを眺めた時、人の目線(高さ一・五メートル)と大文字を直線で結んだ線上に建築物が重なる部分が出る場合、重なる部分の除去のため、高さを抑えるか、形状を変えなければならない。
 また、金閣寺や仁和寺など世界遺産の境内周囲五百メートル区域ではこう配屋根設置を義務付け、塔屋設置を禁止する。屋根や外壁の色彩も和風を求める。御池通や四条通など三カ所の視点場でも、道路両側の三十メートル区域で眺めに支障がないよう塔屋やアンテナなど設置物を禁止し、東山への眺望を確保する。
 新景観政策案が設定した視点場は次の通り。
 【境内の眺め】上賀茂神社▽金閣寺▽京都御苑▽下鴨神社▽銀閣寺▽修学院離宮▽二条城▽清水寺▽西本願寺▽東寺▽仁和寺▽高山寺▽天龍寺▽龍安寺▽西芳寺▽桂離宮▽醍醐寺
 【通りの眺め】御池通▽四条通▽五条通▽産寧坂付近の通り
 【水辺の眺め】琵琶湖疏水▽濠川・宇治川派流
 【庭園からの眺め】円通寺▽渉成園
 【山並みへの眺め】鴨川から東山▽鴨川から北山▽桂川から西山
 【「しるし」への眺め】御薗橋、鴨川左岸から「船形」▽西大路通から「左大文字」▽船岡山から「大文字」「妙法」「船形」「左大文字」▽鴨川右岸から「大文字」▽高野橋、高野川左岸から「法」▽北山通から「妙法」▽松尾橋、罧原堤から「鳥居形」
 【見晴らしの眺め】賀茂大橋から北方▽桂川両岸から嵐山一帯
 【見おろしの眺め】大文字山から市街地
【2007年2月5日掲載】