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眺望をひらく(2)

反発 規制に「減収、価値下落」
巨大な看板が並ぶ京都駅前。ビルの屋上部分や高さ規制を超える位置の広告は、撤去の対象となる(京都市下京区)
 「ほとんど利益が出ないんですよ」。大阪府内の不動産会社の事務所。社長は、京都市上京区で計画中の賃貸マンションプランを見ながらつぶやいた。
 昨年六月、堀川通沿いにある七階建て中古マンションの購入契約を結び、解体して十階建てにしようと計画した。見込んだ年間賃料収入は約五千万円。ところが、契約から五カ月経った十一月、市が新景観政策を発表、高さ規制の強化を打ち出した。七階までしか建てられず、二千万円も減収になる試算が出た。
 規制強化までに着工しようとしても間に合わない。とはいえ、このままでは利益が出ない。「解約で手付金の三千万円を捨てようかとも思った」。思い悩んだ末、社長は「立地条件がよく、将来、買い手がつくかもしれない」と改修を決めた。
 新景観政策は、建築物の高さを抑制し、こう配屋根の設置義務などデザイン基準を見直す。他都市に比べ古都・京都はすでに規制が厳しい。「さらに輪をかけるのか」。建設業界などから反発する声が噴出した。
 屋上看板の禁止や広告面積の縮小が求められる屋外広告業界への影響も深刻だ。広告面積の縮小は減収に直結し、中小業者には痛い。京都府広告美術協同組合は昨年十二月、全国規模の上部団体とともに反対の意見書を市に提出した。幹部は「規制を嫌って京都では広告をやめようという企業が出始めたと聞く。とことん反対運動する」と、全面対決の姿勢を見せる。
 「和風」を求めるデザイン基準の強化は、高さ規制とともに、住宅関連業界に衝撃を与えた。
 京都市内にある大手住宅メーカーの支店長は「家を建てるお客さんの好みはバラバラ。しかも和風を好む人は少ない」と実情を訴える。メーカーにとってはデザインの個性はセールスポイントの一つ。「大手でも京都から撤退する会社が出るかもしれない」
 反発は業界にとどまらない。高さ規制が強化されれば、「不適格物件」となる既存マンションが出てくる。「資産価値が下がる」「融資が受けられなくなる」。入居住民も不安の声を上げる。
 府宅地建物取引業協会の幹部は「都心部の土地の取引価格がこの半年で大幅に下がった」。市内の金融機関幹部も「最近は取引が止まって様子見の状態。当面は売買価格が下がるのではないか」と予想する。
 ただ、京都商工会議所の村田純一会頭は会見で「街をきれいにするのは、京都の利益になる」と、規制強化を受け入れる姿勢を示している。  市はこの間、住民説明会などで「京都らしい景観を守れたら、将来の資産価値は必ず上がる」と力説してきたが、反発を受けて先月二十七日に新景観政策の修正案を提示した。高さ規制強化の骨格は変えず、植栽義務の見直しや新基準に合わない屋外広告物の撤去猶予期間の延長などだ。
 新景観政策の可否は、二十日開会予定の二月市議会の審議に委ねられている。不動産関係の業者の中には、支援する市議に接触する人も現れた。「どんな動きになるか、しっかり見ていきます」。プレッシャーを強める構えだ。
【2007年2月6日掲載】