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眺望をひらく(4)

誘導 建て替え助成 合意が鍵
中心市街地に建つ高層マンション。新基準に合わない既存の建築物をどう建て替えるのか(京都市中京区)
 京都市中京区のマンション住民が一月下旬、市の新景観政策をテーマに開いた勉強会で、一つの試算が示された。四十九世帯が住む十一階建てマンションは、建て替えると五階になり、一戸当たりの占有面積やガレージを切り詰めても十二世帯が住めなくなる。四年前、大津市から引っ越してきた主婦(四九)は「三十年後、『出て行け』と言われたらどうしよう」。不安がこみ上げた。
 新景観政策が実施されると、市街地の約三割で高さの上限が「1ランク」下がる。主婦の住む地域は、中心部の「職住共存地区」なので三十一メートルから十五メートルに。四千五百万円で購入した新築マンションが「不適格物件」となる。「こうなることが分かっていたら、買わなかった」。主婦は嘆いた。
 市によると、新しい高さ規制で、事務所ビルを含め千八百棟が「不適格建物」になるという。建て替え時には新基準に従うことを求められる。今すぐに変更を迫られるわけではないが、住民の不安は残る。
 こうした状況を解消し、スムーズに建て替えを誘導するため、市は助成制度を打ち出した。住居部分の工事を除く、解体や設計、エレベーターなど共用部分整備など補助が出る国の助成制度を活用し、例えば坪(三・三平方メートル)単価六十万円でマンションを建て替えた場合、一戸(七十平方メートル)当たりの負担は二千万円程度になるが、市は「工事費の約二割は助成できる」と説明する。
 また、七百万円を限度に住宅金融支援機構から低金利の追加融資が受けられる制度を市独自に設けるほか、建て替えの住民合意を円滑に進めるため、弁護士や設計士などの専門アドバイザーも要望に応じて派遣するという。
 しかし、マンションの建て替えは、所有者の八割以上の合意がないとできない。阪神大震災で全半壊したマンション(百七十二棟)で、住民の間で意見が割れ、十二年たった現在も再建できない棟もある。「規制強化で入居できない所有者の出る京都はもっと厳しい」。市内の不動産業者は指摘する。
 町並みを保全するため、住民が高さなどを自主的に規制する「建築協定」「地区計画」は、マンションの建て替えとは違った合意形成だが、市によると、中心市街地の十八学区中、学区単位で合意を取り付けたのは三学区にとどまっている。
 五年前、中京区の姉小路地域(約一・九ヘクタール)で協定を実現させた谷口親平さん(六一)は、「近所づき合いしている仲間でも合意を取るのは難しく、マンションはなお大変。でも、協議の中で交流も深まる」。谷口さんの地域でも、合意が得られない十二人に対して、粘り強く説得を続けている。
 「行政の規制が遅すぎた」。住民団体から指摘が出る中、市は来年度予算案に建て替え助成策を盛り込み、新規制の準備を始めた。どう、高さを抑え、均整のとれた町並みを復活させるのか。
 立命館大のリム・ボン教授(都市計画)は、「高さを規制しても、その範囲でふぞろいな建物が建てば、良好な景観を形成できない。市民の寄付などによる資金力を持った景観NPOを育成し、住民の景観に対する意識を向上させるしかない」と話す。
【2007年2月8日掲載】