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眺望をひらく(5)

創造 100年後の古都 どう共有
山並みとともに、大文字の火床を望む鴨川沿い。この風景を100年後も残したい(京都市北区)
 石造り風のオフィスビルが立ち並ぶ大阪市北区の御堂筋沿い。均整のとれた町並みにガラス張りのノッポビルが現れ出した。一九二〇年から続けてきた高さ三十一メートルの規制を緩和した結果、ビルの建て替えラッシュが続いている。
 「景観だけでは生きていけないという経済界の要望が強く、緩和に踏み切りました」。大阪市はバブル崩壊後の活性化の切り札として九五年から高さを六十メートルに引き上げた。一部地区では制限撤廃も予定する。「人がにぎわい、税収もアップする」。大阪市のほか、名古屋市も容積率緩和の特例で二百四十七メートルのビルを認めるなど、経済効果を狙って高さを緩和する都市も多い。
 これとはまったく逆の方向に進むのが、京都市が導入を目指す新景観政策だ。「京都は京都の道を行く」。桝本頼兼市長は、目先の利益を優先するのではなく、五十年、百年後の古都を見据え、「都市格を上げる」と繰り返し訴えている。
 どのような姿を思い描くのか。市都市計画局の大島仁局長は「中低層の建物が並び、空が広く感じられる。烏丸通沿いのビルは美しいスカイラインを描き、北山の緑の稜線(りょうせん)が見える。町家の風情も楽しめ、ゆったりとした空間の中で人々が暮らしている…」。都市格がさらに上がる百年後に思いをはせ、「必ず、モノ、人、金が京都に集まるんです」と断言した。
 ただ、財政力が弱い京都市単独で実現するのは難しい。二年前、市は景観保全を柱とする「京都創生」を打ち出した。十年間で約五千億円の財政的支援を受ける特別措置法の制定を国に求め、国会議員による議員連盟も結成された。
 景観保全で唯一、特措法が制定されたのは奈良県明日香村。飛鳥時代の風景を後世に残すため、村全体を「凍結保存」する。だが、一九八〇年の法制定までに十年の時間を要した。
 全域で建物の高さは十メートル以下に抑えられ、民家、事業所問わず建築物は瓦屋根など和風デザインしか認められない。農業を営む男性(七七)は「畑を駐車場に変えようとしても許可されない。自宅の改築も高額になり、見送るしかない」という。
 住民が厳しい規制を受け入れ、交付税優遇や国と県から三十億円の基金を受け、基金が生む利子などで保全策を打っている。人口六千五百人の村に、年間七十万人以上の観光客が訪れる。
 京都市はその二百倍以上の市民が住み、しかも、凍結保存するわけではない。古都の景観を守りながら、「進化、発展させる」という理念を据え、国に支援を求める。
 それだけに特措法実現には、京都を特別に保全する理由と熱意が求められる。「これにはね。京都の都市像をもっと明確にして、市民の合意を得ることが前提」。休眠状態の議員連盟所属の国会議員は指摘する。
 新景観政策は比類なき古都の眺望を担保するとともに、市や市民の熱い思いと「痛み」を求める特措法と不離一体の関係にあるともいえる。
 議論は二月議会で一つのヤマ場を迎える。反発や異論に対し、大島局長は「できるだけ分かりやすい形で、都市格が上がった姿を議会や市民に示したい」という。未来の京都の眺望をどう描き共有するのか、各方面の創造力が問われている。=おわり
【2007年2月9日掲載】