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保全へ「犠牲」やむなし

京都経済同友会代表幹事 渡部隆夫氏 
 京都市が建築物の高さやデザイン、屋外広告の規制を強化する新景観政策を打ち出した。京都らしい景観を守るためだが、一方で市民生活や営業活動への影響を心配し、反対する人たちもいる。新政策については、十三日を会期末とする市議会の審議が、大詰めを迎えている。関連する条例案や予算案の可否を前に、京都各界の意見を聞いた。

 「山紫水明」。これが京都の命。どこからでも山が見え、百四十七万人が住む都市を流れる鴨川も清い。眺望をさえぎる大きな建物もない。これが京都市の原点であり、なくなればほかと何も変わらない普通の街になってしまう。
 鴨川の三条から四条のあたりで西を眺めるとビルが立ち並んでいるのが見える。潤いのある環境とは違う。このままだと景観がますます壊れる。今、止めないといけない。皆そう思っている。
 壊れゆく町並みを前に、効率を優先した経済界にも反省がある。内心では「屋上に大きな看板はよくない」「町家は大事にせなあかん」と思いながら、「自分(の会社の経営)だけが何とかよければ」と思っている間に京都の景観は崩れた。
 効率優先で何をやってもいいのではない。日本人の心の故郷である京都の保全は、われわれ京都人がやらねばならない。京都の経済界もそう気付いた。反省も込めて、自己犠牲も多少やむなしかなと思っている。
 こうした思いから、同友会は二〇〇二年に「歴史的都市の保全は国家的課題」とする内容の緊急提言をまとめた。経済界の意見として、「もう一度やり直そう」となった。ここから京都市が京都創生に動き、景観法の制定にもつながったと自負している。
 新景観政策は、百年後を見通した勇気ある提案だと思う。わたしたちの提言が新政策の条例案に結びついた面もある。ぜひ頑張って景観保全を進めてほしい。
 同友会の中でも賛否はある。しかし、これからは効率ではなく公益優先でなくてはならない。景観法にもある「美しく品格のある国土」は、単に総論賛成というだけでは実現しない。負担は皆でしていこうという考えだ。ただ、活力のない街に繁栄はない。山紫水明の落ち着いた街に住みたい人が旧市街地を選ぶなら、効率を求めて新産業で活性化をしたい企業は市南部の高度集積地区に集まる、という使い分けがあっていい。
 市は「新都心の景観はこうだ」という案を示していくべきだ。例えば、同友会が構想する三百五十メートルタワーをシンボルに、周辺は高さ六十メートルのビルでそろえる。そこに進出する企業が見習うようなデザインの建物として京都市役所がある。そんな模型も作って欲しい。ビジョンが魅力的なら世界中から投資の動きが出てくる。
 また、政策への理解が広まっていないとの指摘もあるが、京都市民には「言わずもがな」という意識があるのではないか。大都市でも長期的には人口が減少していく。高層マンションをどんどん建てるようなまちづくりが果たしてふさわしいだろうか。新時代への予感を感じ取るのが早い京都市民はこの点に気付くのも早いはずだ。
わたべ・たかお ワタベウェディング社長。京都市美観風致審議会委員。2005年から京都経済同友会代表幹事。66歳。
【2007年3月3日掲載】