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町並み整えば必ず潤う

京都仏教会理事長 有馬頼底氏
有馬頼底氏
 昨年五月、フランスの美術館長と京都市の桝本頼兼市長に会う機会があり、今回の新景観政策の話を初めて聞いた。「素晴らしい。わたしたちが十何年も言ってきたことと、ぴたっと合いました。心から敬意を表します」。そう伝えた。
 そして昨年末、仏教会の理事会で報告した。「市の案に、わが仏教会は全面的に支持し、協力しましょう」と決議した。異論はまったくなかった。京都ホテルの高層化から景観問題に取り組み、もう十五、六年になる。「やっとここまできたか」という思いが強い。
 ただ、あえて決議を前面に出すと、仏教会の圧力で政策ができたのではないかと誤解を招きかねない。コメントとして出すのは控えた。市と和解はしたが、高層化問題からぎくしゃくしたいきさつもある。せっかくのプランがつぶれるのもまずいと考えている。
 今の景観は、惨憺(さんたん)たる状態だ。毎年のように町家が消え、代わりにどんどんマンションが建つ。町並みがバラバラで一貫性がない。ポルトガルのリスボンで丘から海を望むと、瓦屋根の色が統一されている。比べて京都はひどい。国際都市の理想の姿とは言えない。
 そもそも京都で総合設計制度を採用したのが間違いだった。公開空地を提供すればボーナスで高さを上積みできる。狙いは土地の値上げだったが、永遠ではない経済に左右された。やるべきではなかった。高層マンションなども、建てた会社は成功すれば次へ行く。根を下ろさず、責任もない。それによって町並みが破壊されている。
 失礼な言い方だが、広告、看板の姿もみっともない。何とか改めてほしい。ただ、業者がダメージを受けないような知恵は必要。一概に広告や看板はだめ、ではなく、生きる道も考えなくてはならない。京都市民のみならず、世界の人々が京都の遺産、文化を守っていかねばならない。市民は痛みを伴うが、だれもが辛抱しながら百年、二百年先のことを考えて踏ん張らねばならない。
 かつて京都市は、拝観料に一人当たり五十円の税を課して財政の足しにしようとした。われわれは断固反対し、門を閉めた。京都の経済がどうなっているか、市民は初めてそこで分かった。神社仏閣がなかったら京都は立ち行かないと。
 国が観光立国と言い出したが、京都の過ちは二度と繰り返してほしくない。人が来る、じゃあ税金を取ろうというのは、とんでもない過ち。まったく失礼な話で、だれも京都に来なくなる。実際にそうなった。
 今回の政策が実現し、町並みがきちんと整備されれば、観光客は必ず増える。市の五千万人プランも現実味を帯びている。寺院が(財政面で)協力するかしないかではなく、景観が整い、人がどんどん来れば、京都の財政は必ず潤うことになる。それが大きい。
 ありま・らいてい 臨済宗相国寺派管長。金閣寺、銀閣寺の住職も務める。1988年から京都仏教会理事長。74歳。
【2007年3月5日掲載】