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住民への補償なく乱暴

住民団体副理事長 白浜徹朗氏
白浜徹朗氏
 規制の強化によって、数多くの既存不適格の建物を出す。マンションでも一戸建てでも、同じ規模の建て替えができないものがかなり出てくる。土地や建物の価格に影響する経済政策であるのに、市には不動産価格の変動に関するシミュレーションすらない。経済への影響を真摯(しんし)に考えていない。
 実際に市が方針を発表しただけで、不動産の取引が止まったり、価格が下がる例が出ている。この状況であえて条例案や都市計画の変更を通せば「故意責任」が市全体、市長個人に問われる。問題があると分かっていながら実行するのだから、過失ではない。裁判にもなるだろう。
 景観法上、景観重要建造物に指定した建物は、増改築しにくくなるが、公共の福祉のために犠牲があるとして、補償も義務付けている。ところが、新景観政策には補償がない。京都でも一部の弁護士が「既存不適格でも補償は不要」と言っているが、不動産は一生に一度の大きな買い物であり、判断が軽すぎる。
 また、既に建っているマンションやビルに対して、景観上の利益があるとして「違法建築にしろ」と言えるような法律の概念はない。「景観の侵害だ」と言っても、裁判所がビルを取り壊せと命令するはずがない。今回、既存不適格にするのは、それに近いことをやろうとしている。
 京都の景観論争は不幸にして高さ問題になった。一律に「高ければ景観を害している」と考えるのは教条主義だ。都心に住みたいと思えば、土地を共有化して高層化するしかない。その要求がなぜいけないのか。
 市に届いた五百七十六通のパブリックコメントをすべて読んだ。マンション住民からは「市から市民として見てもらっていない。対応が不誠実」との声が出ている。不安を切々と訴えている。中には「リスクのあるマンションを買うのは自業自得」との意見もあったが、だれもリスクがあると思って買っていない。
 市は地下鉄東西線を建設し地下街のゼスト御池を造り、都心の人口集中を見込んだ。実際にマンションが増え、住みたい人も増えている。なぜ抑制するのか。政策の方向性が矛盾している。
 しかも、今回の政策で景観はよくならない。マンションをつぶさず、古いまま残すことになるだろう。今のマンションなら百年近くは持つ。木造でも、同規模で建て替えできないと残っていくだろう。景観だけでなく、安全面の問題も出てくる。
 現状は、景観保全というと何をやってもいいような風潮になっている。新政策は乱暴すぎる。撤回し、違った誘導策を考えるべきだ。あの「京都ホテル」にも悪い印象はない。京都特有の「うなぎの寝床」でマンションを建てても壁のようなビルになる。一定の公開空地を取り、比較的広い土地に高い建物を建てていくよう誘導すれば、雰囲気もよくなる。
 しらはま・てつろう マンション住民や事業者でつくる「暮らしやすい京都の住環境を考える会」副理事長。弁護士。47歳。
【2007年3月6日掲載】