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新景観条例が成立

全会一致 周知徹底も決議 高さ・デザイン 規制強化へ
 京都市の二月定例市議会は十三日午後、最終本会議を開き、京都らしい景観の保全と創造に向けた新景観政策の導入に伴う「市眺望景観創生条例」など関連六条例や新政策の周知徹底などを市に求める与党会派の決議案を全会一致で可決した。このほか、総額六千九百八億五千万円に上る二〇〇七年度一般会計当初予算案、市長や副市長などの給与を5−15%、市議の報酬5%カットを来年度末まで延長するための関連条例改正案など計百七議案を原案通り可決し、閉会した。
 新景観政策は条例制定を受け、市都市計画審議会で高さ規制の基準の変更を諮ったのち、約五カ月間の周知期間を経て、九月一日から導入されることが決まった。
 今議会は、京都市の景観施策を抜本的に見直す新景観政策が最大の焦点になり、高さやデザイン規制の強化で影響が出る業界団体やマンション住民から反対の声が上がる一方、市議会与党会派からも異論が出た。市は昨年十一月に公表した素案を修正したり、議会への説得を強め、最終的に各会派が賛成する形で意見集約した。
 今後、建築物の高さが中心市街地の「田の字」地区で最高四十五メートルから三十一メートルに、地区内の職住共存地区も三十一メートルから十五メートル、堀川通など幹線道路の沿道なども高さ規制が強化される。
 地域特性に応じてデザイン基準も細かく設定される。世界遺産の十四社寺を含む三十八カ所に「視点場」を設け、眺望や借景保全のため建築物の高さやデザインを規制。風致地区も金閣寺や仁和寺など世界遺産周辺など十カ所にも広げる。屋外広告物も地域に応じて広告面積基準を見直し、屋上看板や点滅式照明は全面禁止になる。
 関連条例の可決を受けて、桝本頼兼市長は「五十年後、百年後を見据え、世界に誇る歴史都市・京都の優れた景観を保全、再生し、未来に伝えていくもので、市会の決議も重く受け止め、職員一丸となって実現を図っていく」とのコメントを発表した。

将来像「市民と共有」を 前例なき政策 生活にどう影響

新景観政策のポイント
 京都市の新景観政策に関連する条例案が、十三日の市議会本会議で可決され、古都の新景観論争に一つの区切りがついた。桝本頼兼市長は条例を九月に施行する意向を表明しており、大都市の市街地のほぼ全域で景観保全のための規制を強化する前例のない政策が導入されて、市民生活にどのような影響が実際に出てくるかが今後の焦点となる。
 昨年十一月下旬に政策の素案がまとまって以降、審議はハイペースで進んだ。市は「来年度早期に実施」の方針を早々と打ち出し、一カ月の市民意見募集を経て二月議会に条例案を提案。一般会計予算を審議する市議会の普通予算特別委も「景観一色」になった。
 この間、影響を受ける業界やマンション住民は、不動産の資産価値の下落などへの不安を訴え、導入を急ぐ市の姿勢に不満が広がった。市議も四月の選挙を控えているだけに、世論に神経をとがらせた。
 「いかに不安を解消するか」。市議たちの議論はほぼこの一点に集中した。市民や事業者の協力を得られるよう市に万全の対応を求める新景観政策に対する決議が、与野党の全会一致で可決されたのもこのためだろう。
 当初、与党市議から異論が強く出され、曲折も予想されたが、最終的に市議全員が賛成した。任期切れの前に議会としての判断を示す必要があったほか、景観問題の世論調査で、多くの市民が賛同した結果にも敏感に反応したに違いない。
 理事者側は議論のヤマ場を越えて胸をなで下ろし、市議も選挙へ走りだした。
 だが、審議にかかわった誰もが、この政策で京都の景観がどのように保全され、何が新たに生み出されるのか、まだはっきりと見えていないのではないか。
 政策そのものへの理解を得るためにも、市は徹底した説明を果たすことに加え、将来像を市民と共有するための町並みのイメージ、資産価値への影響などに関する調査結果を提示していくことが必要だ。
 新景観政策を進める先には、国家戦略で京都を保全、再生する「京都創生」の実現がある。市民の「犠牲」を伴いながら、五十年、百年先まで、景気や税制の変化に大きく左右されずに景観を保っていけるのかも問われている。
 それだけに、九月一日に新たな制度が動き出し、市民が直面する新たな現実と課題に市と議会が真摯(しんし)に対応できるかどうかが、新政策の成否を占う鍵となるだろう。

「歴史的な一歩」町並みや眺望 再生を期待

 京都市の新景観政策の導入が13日、京都市議会の関連条例可決で決まった。早期導入を求めてきた市民団体などが「歴史的な景観再生に向けた第一歩」と歓迎する一方で、不動産の価値低下を心配する住民から「多数決で押し切った暴挙。訴訟の準備を進める」と厳しい批判の声も上がった。
 中心市街地のまちづくり団体「姉小路界隈(かいわい)を考える会」(中京区)の谷口親平事務局長(六〇)は「広い空を確保する眺望が京都の特徴。住宅が多いところに高層マンションを建設するのは力ずくで生活を奪うようなもの。もっと早く成立してほしかった」と話した。
 京滋のマンション管理組合でつくるNPO法人(特定非営利活動法人)「京滋マンション管理対策協議会」(下京区)の谷垣千秋幹事(五七)も「景観意識の高い京都では高層マンションの反対運動が激しく、地域住民と入居者でトラブルも起こる。周辺住民が納得する高さのマンションに住むことも大切」と、マンション住民の立場から高さ規制を歓迎した。
 一方、マンション住民らの「暮らしやすい京都の住環境を考える会」の中田英二代表(七七)=中京区=は「問題の多い政策が十分な議論もされずに通ってしまった。今後、マンション間で訴訟に備えたグループを結成し、経済被害が出れば、司法の場に訴える」と訴訟も辞さない構えだ。
 府宅地建物取引業協会の川島健太郎副会長(六三)は「反対した結果、狭小住宅への配慮などが市の修正案に含まれ、成果はあった」としながら、「多数決で通っても、規制で負担を受ける市民を無視するなら許せない。今後も監視を続け、景観を良い方向に持って行きたい」とした。
 景観法を管轄する国土交通省景観室は「ドイツやフランスなどのヨーロッパでは歴史都市に厳しい規制は常識。京都の取り組みはそれに迫る試みで、前例のない政策の行方に注目したい」と話した。
【2007年3月14日掲載】