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景観規制強化 不安も

京都市、きょうから
 一日スタートの京都市新景観政策は、国内の大都市でこれまで最も厳しかった高さ規制をさらに強化し、住宅地のほぼ全域で和風を原則とするデザイン基準を取り入れた上で、「眺望」を阻害しないための規制を上乗せする複合的な取り組みで、「歴史都市・京都の保全と再生」を目指す。一方、規制強化による住民や業界への影響も大きい。新政策が軌道に乗るかどうか、市の力量が問われる。

住民・業者 影響大きく 「10年後には効果」と市

 「建物の色を決めないと着工できないのか」「このエリアの看板はどういう規制を受けるのか」
 新政策が導入される前日の三十一日も、市役所の建築デザインを審査する窓口に次々と業者が訪れ、図面を広げて新基準に合うかを確認しながら、担当職員と相談していた。
 こうした光景は政策実施の関連条例が成立した今年三月から続いている。市は新政策の基準による「事前指導」を始めた。
 だが、採算面や建築主らの要望を理由に旧基準で着工しようとする動きは収まらず、五月には市中高層建築物条例の対象となる三階以上のマンションなどの届け出が前年同期比で一・八倍の六十二件に上った。屋外広告の許可も八月二十日までで前年同期比四倍の百六十件出るなど「駆け込み」が目立った。
 一日からは指導ではなく、条例違反には罰則も伴うが、高さやデザイン規制の抜本的な見直しは、土地を有効活用したい業者への影響が大きく、既存マンションも新基準に合わないと「不適格物件」となり、住民の不安も尽きない。
 それだけに市議会では付帯決議で「市民や事業者の不安の払拭(ふっしょく)」を求めたが、市が定めた半年間の周知期間で、十分に不安が解消できたのか。関係業界では、不満や不安がくすぶり続けている。
 分譲住宅を手掛ける右京区の建築士は、市が定めたデザイン基準を取り上げ、「市の言う『原則』や『例外』は具体的に何をどこまで認めるのかが分からず、お客さんと具体的な設計の話がしにくい」と困惑する。
 中古物件の流通を専門とする下京区の業者は「既存不適格の中古物件に金融機関がローンを認めないと、流通が止まり大打撃だ」と懸念し、看板制作の業者でつくる京都府広告美術協同組合の上出晧一郎理事長も「市の許可が従来は二週間程度だったが、最近は一カ月以上かかっており、遅れることでさらに無許可の看板が増えないか心配だ」と指摘する。
 実際に制度が動き出しても景観面での効果がすぐに表れないだけに、こうした不安を着実に解消して運用することが、実効性を高めるには欠かせない。
 東京や大阪などが規制緩和による高層化で経済活性化を狙う流れと対照的に、高さを抑えた和風の建物が並ぶ風情ある町並みをつくり、京都の価値を高めようという長期戦略は、市民の共感を得られなければ政策が継続しない可能性もある。
 福島貞道・市景観創生監は「十年後には政策の効果が表れ、方向性が見えてくる。見た目をそろえた箱庭をつくるのではなく、街の品格を高めて歴史都市の冠を持ち続けられるよう、五十年、百年かけて緩やかに再生していく政策だということを説明して進めていきたい」と話している。

新景観政策の概要

<高さ>
・上限45メートルから31メートルに引き下げ、基準は6段階
・主な幹線道路沿いは15―25メートル、住宅地は10―15メートル
・優良デザインの構造物は緩和措置
・「視点場」からの眺望を阻害しない高さ基準も設定
<デザイン>
・和風が原則の美観地区は8類型60地域に再編。瓦屋根の設置や植栽を求める
・禁止色を数値で明確化
・狭小住宅の建て替えには特例措置
・風致地区は世界遺産周辺などで拡大
<屋外広告>
・屋上設置、点滅照明は全面禁止
・面積縮小や設置する高さの引き下げ
・旧基準の広告撤去までは猶予は7年間
<関連施策>
・町家専門の耐震診断士派遣と改修助成
・マンション建て替え・改修アドバイサー派遣
・景観の専門家による政策アドバイザー、建築士らによるデザイン協議会設