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(2)受忍

こだわりより規制共有
地中海風をイメージしながら、濃い茶色の屋根と薄いピンクを基調とする外壁になった新築の家(京都市南区)
 「本当は地中海風に仕上げたかったんですが…」。今年二月に京都市南区吉祥院に完成した会社員濱崎貴志さん(47)の自宅は当初、思い描いた外観と異なり、屋根や壁の色が抑えられた。シックな感じの新居に、濱崎さんは少し戸惑いもある。
 業者と設計を始めたのは昨年八月。翌月に新景観政策が導入され、市内大半の地域で屋根の色は「黒か濃い茶色か濃い灰色とする」など規制が強化された。吉祥院地域は「町並み型建造物修景地区」に指定され、「生活に潤いを与えるよう壁面の色彩に配慮する」とのデザイン基準が設けられた。
 初めに計画した「黄色い壁やオレンジ色の屋根」をあきらめ、業者と相談の上、落ち着いた色に見える「濃い桜色の壁にワインレッドの屋根」に変え、市に申請した。
 だが、却下された。長女が進学する今年四月までに引っ越しを終えたい事情もあり「やむを得ず、薄いピンクの外壁と濃い茶色の屋根にした」。外観へのこだわりを捨てるしかなかった。
 「山並み背景型建造物修景地区」の左京区松ケ崎で自宅を建て替える村田裕哉さん(46)も、規制の影響を受けた。六十平方メートルほどの土地を有効に使いたい。屋根裏に倉庫を設けるため、一方向だけにこう配がある「片流れ」の屋根を設計した。だが、この地区は山形のこう配の「切妻」が基本。規制強化後、「傾斜角度が二段階ある片流れ」が認められた前例があったため、昨年十月この形で申請をした。
 ところが、市は業者を通じ「原則は山形」と見直しを求めた。村田さんは「ほかによい方法はない。前例もある」と市役所に直談判し、協議の後、担当者も「そこまでいうなら」と認めた。家はこの夏に完成する。
 二人の家を手掛けた会社(北区)の設計室長大島剛さんは細かすぎる基準とあいまいな運用を問題にする。「どんなまちを目指しているのか、現状の規制から見えてこない」といら立ちを隠さない。
 ある地区では三階建ての場合、三階の壁面は二階より後退させなければならない規制がある。道路沿いに門を付ければ例外として認められるが、「百万円近く費用がアップし、顧客と業者が負担するしかない」という。
 住民たちは苦慮しながらも新規制を受け入れている。「景観の保全が必要なことはみんなが理解している。ただ今の規制でよいという認識を、住民が共有できているのか」。大島さんは仕事のたびに思いを強くする。
【2008年5月2日掲載】