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(4)転出

規制が影響 売り上げ減
規制強化で思うように活用できない物件が増えている(京都市下京区)
 百年近く京都市を拠点に営業を続ける中京区の工務店が、今年一月、創業以来初めて東京に事務所を構えた。「新景観政策で池の魚が減り、さおも短くせよという。どう釣ったらよいのか…」。社長(44)は、減る一方の仕事を魚に例えながら、市外で活路を見いださなければならない現状を嘆いた。
 市内の住宅着工件数は、昨年九月から今年二月までが三千八百三十七戸。前年同期に比べ52%も減った。改正建築基準法の影響で全国的にも減少しているが、京都の落ち込みはその倍以上で、改善の兆しは見えない。
 「規制強化の影響がじわじわ広がっている。このままでは二十人の従業員を養えない」。社長は市内でも生き残りを模索した。
 下京区に保有する二棟続きの町家を当初はアパートなどに転用しようと考えたが、規制で行き詰まり、一棟を駐車場、一棟を町家の造りを生かした宿泊施設にすることを検討している。
 だが、旅館業法などの複雑な規制があって、簡単には進まない。ようやく宿泊施設への転用のめどをつけた社長は、「規制で一つの蛇口を閉めるなら、別の蛇口を開けてほしい。でないと池は干上がってしまう」。
 新政策が導入された昨年九月以降に売り上げが一割減少、利益も半減。社長は東京進出を決断した。
 三月、四条河原町近くのビル屋上の看板が、契約切れの時期を迎えた。中京区の広告代理店の男性(63)は、今年初めから新たな契約先を探して奔走していた。
 屋外広告の規制強化で屋上看板は全面禁止となったが、経過措置で既設なら最長七年間の猶予がある。この猶予を生かそうと顧客に働き掛けた。だが、「景観条例に逆行するのは社のイメージダウンになる」。どの企業からも似たような答えが返ってきた。
 結局、三月末に看板の骨組みごと撤去され、代理店とオーナーの年間数百万円の収入が消えた。代理店全体の売り上げは昨年九月以降、約15%も減った。
 穴を埋めようと営業担当の男性(38)は、新しい客を求めてほぼ二週おきに東京へ出張している。「京都では新しい仕事はみつからない」。都内のホテルに三、四日滞在しながら顧客を探している。
 市内では違反看板が依然として目立つが、この代理店は市の登録業者として規制を守ってきたという。新しい展望が開けない。「いずれは京都から撤退するかもしれない」。会社で最近、ささやかれるようになった。
【2008年5月5日掲載】