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(5)特例

前提の公益性に注文も
鴨川河川敷(写真上)と丸太町橋(同下)から大文字を眺めたシミュレーション画像。いずれの視点場からも新病棟(赤線)は手前の木立や建物に隠れる=京大資料を基に作成
 京都市内で三月七日開かれた市景観審査会。京都大医学部付属病院(左京区)の高さ二十メートルまでしか建てられない予定地に計画された約三十一メートルの新病棟をめぐり、「特例」を許可するかどうかが審議された。
 「医療だけでなく教育、研究の機能も果たすのが大事だ」「建物の高さだけでなく、総合的に判断しなければならない」。都市計画や建築、経済などの専門家の議論は、高さや外観よりも、病院の機能からみて特例が必要かどうかという「公益性」に集中した。
 新景観政策で創設された高さ特例(景観誘導型許可)は、「優れたデザイン」「公共・公益施設」など五つの条件のいずれかに該当する場合、市との事前協議や審査会を経て市長が許可する制度。京大病院はその第一号として注目を集めた。
 申請を受けて審査会を始めた二月ごろは「雲をつかむような状態だった」と会長の川崎清京都大名誉教授は振り返る。特例を認めるデータが不足し、「市の説明も最初は先端医療のために三十一メートルが必要という程度で、公益上の理由が分からなかった」という。
 委員に配られた京大の資料は最終的にA3判約三十ページに及んだ。病院や研究拠点などの機能集約の効果を強調した上で、高層化の必要性が記されていた。当初、反対だった委員の宗田好史京都府立大准教授も「機能の説明を聞いたことで、中身がしっかりしていると思えた」。
 鴨川河川敷など三カ所から大文字を望むシミュレーションの結果、新病棟は新景観政策で重視される「視点場」からの眺望を遮らなかった。審査会は特例を認める方針を固め、四月二十五日に答申をまとめた。
 ただ、特例を問題視する意見も根強い。京都弁護士会で廃止の意見書をまとめた吉田雄大弁護士は「新政策で高さを抑えた。高くして良くなる景観とは一体何なのか。抜け道になっては困る」。より慎重を期すべきと訴え、「公益性を理由にするなら、多くの市民の意見を聞く必要がある」と注文を付けた。
 今のところ新たな申請は出ていない。審査会委員の一人は「京大のケースで特例のハードルが高くなった」という。川崎会長も民間のビルやマンション単体では「許可されないだろう」とみる。民間病院や私立大などから申請は出ないのか。今後どこまで特例を認めていくのか。委員からは「公益性とは何か。誰もが納得するには、まだまだ時間がかかるだろう」との声も出ている。
【2008年5月6日掲載】