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(6)支援

施策と現場かみ合わず
耐震やマンション管理の相談窓口。支援制度を多くそろえるが、あまり利用されないものもある(京都市南区・京都すまいづくりセンター)
 「耐震診断の制度は整っている。でも、その先につなげる制度が足りない」。京都市内で二百軒以上の耐震診断を手掛けた一級建築士の遠藤康雄さん(60)は、改修が進まない現実にいつも歯がゆい思いを抱いている。
 遠藤さんは新景観政策の一環で、市が昨年九月から町家保全を支援するため派遣している「京町家耐震診断士」の一人。今年三月末までに約五十回派遣されたが、診断後に改修助成を受けたのはわずか一件。すでに実施されている一般木造住宅の耐震改修助成も二〇〇四年度以降十六件で伸び悩んでいる。
 「診断を受けるほぼ半数は一人暮らしのお年寄り。満足のいく補強をするには構造や地盤改良以上にお金の蓄えや家族関係が左右する」。遠藤さんは足を運ぶたびに痛感する。
 市は改修資金を低利で融資しているが、遠藤さんが「一軒ずつ異なる実態にきめ細かく相談に応じる態勢が弱い」と指摘するように、有効な施策を打ち出せてはいない。
 施策と現場のニーズがかみ合わない状況−それは分譲マンションにもみられる。高さ規制強化でマンション住民を中心に不安が噴出したのを受け、市は建て替えや大規模改修に向けた「アドバイザー派遣」のほか、耐震診断や改修助成、建て替え融資などの支援制度をそろえた。
 アドバイザー派遣は昨年七月以降で二十三回の利用があり、関心の高さを示す結果になったが、耐震診断助成はまだ一件だけ。
 観光名所の宇治川派流近くに立つ伏見区の分譲マンション管理組合役員・早井治男さん(74)は「築三十年近くたち耐震に不安がない住民などいない。それでも診断を受け改修費用を出すとなると別問題」という。
 このマンションは二年前の改修で集会室を設けた。管理組合を中心に交流を深め合う活発な活動を始めているが、いざ耐震改修となると二の足を踏む。  市のアドバイザーでもある京滋マンション管理対策協議会の谷垣千秋代表幹事は「管理組合がなかったり、あっても機能していないマンションがまだまだ多い」と分析する。
 市内には古い耐震基準で建った分譲マンションが約二割に上り、市は「建て替えが具体化するのは十年以上先」とみている。そう遠くない将来に、町並みの「土台」となる安全対策をどうするのか。谷垣代表幹事は「居住者と建物の高齢化に対応するためにも、管理組合を機能させ、継続的に支援する施策が必要だ」と訴える。
【2008年5月9日掲載】