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(7)運用

「調和」の創造へ手探り
新景観政策の基準運用について話し合う京都市の担当者(中京区・市役所)
 「和風としてストライクゾーンか」。瓦の形に似せたスレートの屋根材を手に幹部が問い掛けると、「パッと見れば日本瓦に見える」「新開発を前向きに考えるべきだ」「やはりいぶし銀の日本瓦がいい」。若手職員から次々と意見が出た。
 四月中旬の夕方、京都市役所の会議室に建物のデザインを審査する市街地景観課の六人が集まった。個人の好みや企業の採算性を強く反映し、新基準の「原則」を外れた申請に対応するための「円卓会議」だ。
 机の上には新景観政策の基準に合わせて企業が開発した新建材の見本のほか、住宅やテナントビルの完成予想図が並ぶ。「職員個人の判断ではなく公平性を保って判断できる」という。
 この日は「瓦の基準はいったん課の中でも整理したい」と結論を持ち越した。会議の回数は増え、新基準の運用をめぐって手探りの状態が続いている。
 新景観政策を軌道に乗せるには、新基準のスムーズな運用が大前提となる。一方で、高さやデザインの規制強化と対象区域の拡大で審査件数は急増している。
 すべての建物に認定を要する景観地区では、二〇〇七年度は年間約千五百件以上と前年度の五倍近くに増え、一部を除き「届け出」が必要な建造物修景地区では約十倍に膨らんだ。
 市は組織再編や職員の増強で対応し、「大半の案件は申請から二週間程度で処理している」とするが、繰り返し窓口に足を運ぶ業者は「事前協議から申請までにかかる時間が読めない」と不満を口にする。
 今後は新基準で建てられた建物の完了検査にも力を注がねばならない。「事務処理を合理化し、力量を上げて処理を早くし、市民に迷惑をかけないようにする」。寺田敏紀景観創生監は意気込む。
 だが、新景観政策の土台となった答申を〇六年にまとめた審議会で委員を務めた川崎清京都大名誉教授は、「景観の本質をはき違えた運用をしているのではないか」と懸念している。
 今年四月から、祇園の「都をどり」のアーチ型広告が市の指導で縮小されたのを例に、「京都の景観は形式的な指導で論じきれない。調和を創造するのが審査の仕事でもある」と指摘する。
 慌ただしさが続く現場にも不安がある。寺田創生監は「規制と誘導策は、あくまで枠組み。盆地の景色、自然と共生していくという本質を、運用する職員が忘れてはいけない」と戒めた。
【2008年5月10日掲載】