京都新聞TOP > 政治・社会アーカイブ > 京都市新景観条例
インデックス

(3)町家ビジネス

次代へ残す知恵 商機に
宿泊施設に生まれ変わった京町家。古い梁も生かされている(京都市中京区姉小路通堀川東入ル)

 京都市が「景観基盤の核」とする町家。京都ブームで注目されるが、建築基準法の規制で同じ姿に建て替えるのは難しいうえ、耐震への不安などもあり推定年2%、約400軒が消えている。この町家を景観保全と合わせ、新ビジネスにつなげる動きが出始めている。
 市営地下鉄二条城前駅近くの住宅街の路地奥に11月、1日1組限定の簡易旅館「京宿家 城巽あかね庵」がオープンした。町家改修に力を入れる不動産会社の八清(下京区)が手掛け、築年数120年、2階建て延べ約75平方メートルの町家が生まれ変わった。坪庭やひのき風呂を備え、1泊2万2千円から。11月はほぼ満室だった。
 町家を宿泊施設に改装するケースは増えつつあるが、旅館業法や消防法の規制から、個人がリフォームや建て替えをするにはハードルが高い。そこで八清はあらかじめ旅館用に防火設備や水回りなどを整備して旅館業許可を取得、収益物件として販売する方法を考案した。あかね庵はその第1号モデルだ。
 購入した家主も市に申請し旅館業許可を取得すれば経営でき、委託もできる。あかね庵は八清が運営しているが、これを購入し経営委託した場合、年間稼働率60%だと経費を除いても粗利は約300万円を見込め、賃貸より収益性は高いという。
 「町家はもともと居住用なので建物に無理な負担をかけず改修でき、長持ちする」と八清の西村孝平社長。飲食店ほどは立地条件が重要でなく、路地奥の小さな物件でも活用できるという。「新景観政策は町家を残すため導入されたと受け止めている。いかに次の世代が使い続けられるか、これからも知恵を絞りたい」。西村社長は今後、3棟を旅館に変える計画でチャンスをつかもうとしている。
 居住用として町家のリフォームに力を入れる業者も出てきた。住宅建材商社の平安建材(右京区)の中村憲夫社長は「町家を含めたリフォームが京都に特化したビジネスモデルになる」といい、耐震性や断熱性の低さの改善を重視する事業を始めた。
 3月、町家に適した耐震工法やデザインなどの技術を持ち寄るため、地元工務店や設計事務所など25社で町家改修のネットワーク「京ぐらし」を設立。市や国の耐震改修助成やローン減税、太陽光発電設置助成など多様で分かりづらい住宅関連の助成制度を顧客にまとめて紹介し、リフォームの利点を訴える体制も整えた。9月には上京区の上七軒地域にそのモデルハウスが完成し、市民や全国から業界関係者が見学に訪れているという。
 新景観政策がビジネスの新しい芽を育てつつあるが、厳しい制約条件の中で頭一つ抜け出る生き残り策をどう見つけるのか。担保価値がなく消えていく古い町家を前に、中村社長は「制約の中に道筋が開かれているが、中古物件を流通させる仕組みが早急に必要だ」と力を込めた。

【2009年12月18日掲載】