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(4)視点場

眺望守る市民意識課題
視点場の二条城から眺めた市立音楽高校舎屋根。手前の町家と違和感のない屋根が奥へと続く(京都市中京区・二条城付近)

 京都市中京区の世界遺産・二条城と向かい合う町家の奥に、町家の屋根とほぼ同じ角度の勾配(こうばい)を持つ巨大な屋根が登場した。来年4月にオープンする市立音楽高の新校舎の屋根で、設計した類設計室(大阪市)の喜田育樹1級建築士は「二条城の敷地から眺め、新校舎手前の町家と違和感がないようデザインした」と話す。
 二条城は、市が新景観政策の一環で導入した市眺望景観創生条例に基づく「視点場」の一つ。優れた眺めを見ることができる場所のことで、「天龍寺」や「(東山を望む)賀茂川右岸」など38カ所を指定。そこからの眺望を遮ったり違和感を感じさせる色やデザインの建物が建たないよう周辺に規制を設けた。
 規制は3種類。視点場近くの街並みの眺めを美しく保つため勾配屋根の義務づけや塔屋設置を禁止する「近景デザイン保全区域」、遠くから見た時に色をそろえるため屋根や外壁の色彩のみを規制する「遠景デザイン保全区域」、五山送り火などの対象を見たとき視界を遮る高さの建物を制限する「眺望空間保全区域」で、視点場に応じて設定されている。
 同時に、視点場の周辺はすべて景観計画区域や風致保全区域に指定されている。音楽高建設地も「近景デザイン保全地区」とともに、より厳しい景観計画の規制がかかる「歴史遺産型美観地区」で、いわば「二重規制」と言える。喜田建築士は「実際には景観計画の規制にベース設計したが、視点場があることで眺めは強く意識した」という。
 市は眺望景観を「先人から受け継いだかけがえのない財産」と位置づけ、この発想から視点場が生まれた。
 比叡山を借景とする庭園で知られ、視点場に指定された円通寺(左京区)の北園文英住職は、市の姿勢を評価する。高度経済成長以降、「庭の一部」とする比叡山との間に、国立京都国際会館建設や宅地開発など、眺めを壊しかねない計画がたびたび持ち上がり、そのたびに建物の高さを低くしてもらったり、土地を買い上げてきたが、借景はいつ壊れてもおかしくない状況だったという。
 円通寺の庭に立って比叡山を眺める時、扇状に広がる視界エリア(約255ヘクタール)が条例の「眺望空間保全区域」となった。区域内では、視界に入り込む「標高110・2メートル」を超える建築物は原則禁止され、規制以下の高さでも、電柱1本でさえ市に申請なしには設置できなくなった。
 ただ、エリア内の建築主には、他人に良好な景観を提供するための規制に納得できない人もいる。新しい眺望規制に慣れない市民も多い。「長年景観保全を行ってきた欧米では規制を受け容れる市民感情がある。京都ではまだまだで、保全のメリットを市民に還元する仕組みも必要では」。北園住職は規制導入から2年経過した今、そう考えている。

【2009年12月19日掲載】