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(5)不適格物件

建設時期で人気二極化
高層マンションやビルが建ち並ぶ田の字地区。新景観政策で「不適格」となった建築物の建て替えはまだない(京都市中京区)

 「高価買い取りします」。京都市中心部「田の字地区」の築7年の15階建てマンション=中京区=に不動産業者からこんなチラシが頻繁に入るようになった。居住者の男性(73)は「不適格になって価格が下がると思ったが、今のところ大きな影響はない」とほっとした表情を浮かべた。
 新景観政策が導入された2007年9月以前に建築され、現行の高さ規制を超過する「不適格マンション」は約650棟ある。男性のマンションもその一つだ。すぐ建て替えを求められるわけではないが、当初は金融機関が担保価値を認めない可能性が指摘され、資産価値低下を恐れる住民に不安が高まった。
 ところが、金融危機で新築物件が激減した影響もあり、中古市場は活況を呈している。特に築10年未満の物件が人気で、「新築希望の客が中古に流れている」(不動産業者)。近畿圏不動産流通機構によると、中心市街地の中古取引額は新政策導入前の06年度99億円から08年度は114億円に増えた。金融機関も「不適格物件でも同基準で融資を行っている」(京都銀行)と熱い視線を送る。
 一方、築年数が古く、建て替え時期が早く来る物件の需要は急激に落ち込み、「二極化」の現象が表面化している。
 「まだ売れない」。不動産コンサルタントの男性(62)は居住する中京区の築30年11階建てマンションの空き室を見て嘆く。規制強化後に空き室が目立ち、価格も3割下がったが客足は鈍い。将来、建て替えに迫られた場合、5階建てに抑える必要があり、居住世帯の半分以上は住めない。男性は「古いマンションは新景観政策の風評被害にあっている」と顔色がさえない。
 市内のマンション管理組合は約1400。築年数30年以上は135組合で、25年以上大規模改修をしない「要支援マンション」は50組合ある。建て替えには所有者の8割の合意が必要で、空き室が多くなった場合、老朽化した建物が放置される恐れもある。市は建て替え相談に乗る専門家派遣や特別の低利融資制度も設けたが、建て替えのケースはない。
 中古マンションで「長く住み続けられるか」の視点で管理水準を採点し、評価を高めようとする動きも出始めた。建築士らの「マンション総合研究会」(下京区)は今夏から管理組合をミシュラン風に星の数で評価する作業を進め、改修工事や修繕積立金の有無などで採点した結果を、来年春からホームページで公表する予定。同会代表理事の谷口浩司佛教大教授は「不適格マンションは建て替え時に全世帯が入居できず、住民合意は難しい。だからこそ維持管理が重要」と期待する。
 現在、早急に建て替えを迫られる不適格マンションはなく、問題も表面化していないが、やがて訪れるその時にどう対応するのか。明確な青写真は描き切れていない。

【2009年12月20日掲載】