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(7)市外へ流出

緩い規制で「高層」続々
急増する琵琶湖岸の高層マンション。京都市の新景観政策も影響を与えていると言われている(大津市)

 「これから京都は駄目だ。規制の緩い大津がターゲットになる」。大津市内でマンションを手掛ける東京都の不動産会社事業部次長(54)はこう言い放ち、隣接する京都市の新景観政策を皮肉った。
 大津市では近年、琵琶湖岸を中心に中高層マンションが増加している。湖岸からの眺望を売りに人気を集めているが、背景には京都市の新景観政策の影響もあると言われている。高さ規制でマンション業者が京都市内で十分な戸数を確保することが難しくなり、規制の緩い近隣市町を重視しつつある。
 実際、大津市のマンション建築申請件数も京都市で規制強化が言われ出したころから増え始めた。2005年度に12件だったのが、06年度31件、07年度24件に増加。08年度は建設不況から減少したものの、交通の利便性のほか、琵琶湖や比叡山など住環境から、「今後も需要はある」と市内の不動産業者も強気の構えを見せる。
 高層マンションが建てられなくなった京都市内の住民も、市外のマンション業者にとって「格好のターゲット」として映るようになってきた。
 「タワーマンションで美しい夜景を」。10月上旬、京都市伏見区のマンションにこんな宣伝文句のチラシが入った。大阪市内でマンション分譲を手掛ける不動産業小谷光紀さん(49)は「不況で売れない中、今後高層マンションが建たない京都市が狙いどころだ」と明かす。
 京都市内に配布する分譲マンションのチラシを昨年に比べ1・5倍に増やした結果、「問い合わせが増え、高層マンションに魅力を感じている京都市民は少なくない」と小谷さんは売り込みを強めていく方針だ。
 規制強化は京都市外への流出を誘う傾向を生んでいるが、市内では「厳しい規制を受け入れても、街並みが大きく変わらない」という不満も出ている。
 例えば、市中心部の5階建ての適格マンションには基準通り、1、2階に長さ90センチの軒庇(びさし)があり、エントランスにも和の雰囲気が施されて購入者からの人気も高い。しかし、3階以上は勾配(こうばい)屋根を設けたほかは、基本的に普通のマンションだ。
 市都市計画局は「成果は50年、100年たたないとなかなか見えてこない」とするが、下京区の不動産会社の担当者(51)は、高さがそろわず、高層部分はこれまでと同じマンションの姿に、「果たして50年後、適格のマンションが増えても街並みが劇的に変わるのか。新景観政策で得たものより、失ったものの方がはるかに大きい」と落胆した。
 中京区の別の建築会社役員(46)は市内の現場を回りながら、新規制で建った住宅と周辺の既存住宅をよく見比べるようになった。「色も含め細かい規制を受け入れてはいるが、少し離れて見ると既存との違いが分からない。これで古都の街並みと言えるのか」とやりきれない様子で話し、こうも付け加えた。「古都らしくするには、本当はもっと厳しい規制が必要だ」と。

【2009年12月22日掲載】