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「自立」への壁 動き出した支援法

(1)応益負担 〜奪われる楽しみと誇り
障害者自立支援法の施行にあわせてデモ行進し、異議を唱える障害者ら(1日、京都市中京区)
 障害者福祉の大きな転換となる「障害者自立支援法」が施行され、利用料や医療費の一割負担制度が四月から始まった。十月にはサービス削減や福祉施設の経営悪化の恐れも指摘される新たなサービス・報酬体系が導入される。障害者や福祉の現場に広がる波紋を報告する。(社会報道部 目黒重幸、写真報道部 坂本佳文)
 「弱い者いじめの『応益負担』はやめろ」「ヘルパーの有料化反対」。四月一日の昼下がり、京都の繁華街に障害者の叫びがこだました。この日施行された障害者自立支援法に異議を唱えるデモ行進だ。京都府内各地から集まった障害者ら約二百五十人が法の問題点を訴えた。
 車いすでデモ行進に参加した重度障害者の井上文雄さん(四九)=伏見区=は「これからどうやって暮らしていけばいいのか」と戸惑いを隠せない。
 井上さんは府営住宅に一人で暮らす。食事や入浴など朝起きてから寝るまでホームヘルパーの援助が欠かせない。月に一、二度の楽しみが映画観賞や友人との茶話会だ。外出に付き添ってくれるガイドヘルパーを利用する。
 これら福祉サービスの利用料はこれまで無料だったが、法の施行で一割を負担しなければならなくなった。井上さんの場合、毎月上限で二万四千六百円の負担が生じる。京都市の独自施策で三年間は半額に減免されるが「それでも月一万円以上の負担は重い」。
 「今月から外出も減らさないといけない。生きるのに必要なサービスを受けるのに、なぜ国はお金を取るのか」。井上さんは声を絞り出す。
 法は身体、知的、精神障害の福祉施策を一元化するとともに、財源を安定させるため、原則的にサービス利用料の一割負担を定めた。支払い能力に応じたこれまでの「応能負担」から、サービス利用量で決まる「応益負担」に変わったため、障害が重いほど負担が増えることになり、当事者から大きな反発を呼ぶ。
 負担は施設通所やグループホームなどの利用にも及ぶ。利用料のほかにも、食費や光熱水費の実費負担も求められる。知的障害のある橋本和典さん(三〇)=北区=は右京区の授産施設に通う。仕事は生八ッ橋の箱折り。約八千円の月給が励みだ。しかし四月からは施設利用料と給食費の合わせて約一万五千円を払わなければならなくなった。せっかくの給料が吹き飛んでしまう。
 母の久美子さん(六〇)は「箱折りでもお金を稼ぐことにプライドを持っている。仕事に行くのにお金がかかるということを、本人はどうしても理解できない」と悔しそうに話す。
 佛教大の鈴木勉教授(福祉政策論)は「これまでは社会的弱者の格差は是正されるべきという合意が社会にあった。しかし今、小泉純一郎首相は格差を当然と認めている」と懸念し、語気を強める。「障害ゆえに働くことができない人にまで負担を求めるのおかしい。不十分ながらも前進してきた日本の福祉政策が振り出しに戻ってしまった」
 障害者自立支援法に戸惑う現場を、これまでもシリーズ「折れない葦」で取り上げてきました。四月からの施行を受け、問題点を整理します。