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「自立」への壁 動き出した支援法

(4)事業所の憂うつ 〜施設の合併、閉鎖の恐れも
障害者が集い、働き、社会参加する場の先行きに、暗雲が立ちこめる(亀岡市・かめおか作業所)
 亀岡市の知的障害者授産施設「かめおか作業所」で、西村直所長はみけんにしわを寄せて電卓をはじいていた。手元には厚生労働省が三月に示した新たな報酬単価の資料。国から支払われ、作業所の運営に充てられる報酬だが、計算すると十月以降、今の年間八千八百万円から五千四百万円に減らされることが分かった。
 「三千万円もの減収はわれわれの努力で何とかなる額ではない」
 携帯電話がかかってきた。「これではやっていけない。厚労省の狙いがようやく分かった」と先方も憤る。西村さんは小規模作業所の全国組織の役員として、厚労省との交渉に当たってきた。「報酬単価が発表されて以降、全国の施設長からこんな電話がひっきりなしです」と力なく笑う。
 障害者自立支援法の大きな目的のひとつが、膨らみ続ける福祉予算の財源確保だ。そのため厚労省はサービスの利用に伴う四月からの一割負担に続き、十月以降は報酬単価を大幅に切り下げる。
 「まさかここまで下がるとは思わなかった。通所系施設で三分の二、グループホームなどの居住系で半額くらいになる」。障害者福祉が専門の峰島厚立命館大教授はあきれ顔で話す。「同時に職員の配置基準も緩和されたので、正職員をパートやアルバイトに置き換える動きが加速する。リストラではすまず、施設の吸収合併や閉鎖も出てくるだろう」と心配する。
 報酬の支払い方式に市場原理も導入される。厚労省は「利用実態に応じた支払い方式に転換する」として、毎月定額の月払い方式から、利用した日数に応じた日払い方式に改める。営利事業所と同様、利用者数と利用日数で収入が上下する訳だ。「収入を上げるため、利用者の獲得競争が始まる。養護学校の卒業生を確保しようと、すでに職員を回らせている施設もある」(峰島教授)。
 競争の導入はそれだけにとどまらない。例えば就職を希望する障害者に知識や能力向上の訓練をする「就労移行支援」事業が始まるが、その報酬は就職率に応じて加減される。社会に多く送り出した施設は収入が増え、そうでない施設は減額されるという「アメとムチ」の仕組みだ。
 施設が立ちゆかなくなれば不利益は結局、障害者自身に降りかかる。京都府障害福祉室の荒田均室長は「(福祉施設など)社会資源の確保は行政の役目。法の施行で事業所が倒れては本末転倒だ。実態をよく調べ、国に伝えていきたい」と話す。
 かめおか作業所の西村所長は「障害者が地域で暮らし、社会参加できるよう、長年こつこつと働く場を整えてきたのに」と振り返り、悔しさを隠さない。「施設がなくなれば、障害者はまた家に閉じこもってしまう」