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「自立」への壁 動き出した支援法

(5)子どもの療育 〜障害早期対応に遅れも
児童デイサービスに通う有哉君と美奈さん。元気いっぱい滑り台で遊ぶ(京都市)
 京都市内の児童デイサービスの一室。カラフルに絵の具を混ぜ、有哉君(五つ)はなぐりがきした。「こんなのできたで」。指導員に見せ、自慢げだ。
 ここでは発達に遅れや障害のある子どもたちが療育を受けている。軽度発達障害と診断された有哉君も週二回通ってくる。「この前まで一人でずっと絵の具を混ぜるだけだったけど、今日はいろいろ描いてくれた。思いを伝えたり、共感したりすることが増えている」と成長ぶりに指導員も目を細める。
 「三歳前後で診断を受けた当時はそれを受け入れられず、毎日泣くばかりだった」と母の美奈さん(三七)は振り返る。通い始めたのは一昨年の秋。感情をうまく表現できず、動き回ったり、集団になじめなかったりすることもある。「でもここにこれて良かった。個性と可能性を伸ばしてやれるし、わたしも精神的にひと息つける」
 障害者自立支援法は子どもの福祉にも及ぶ。このデイサービスでは、利用が無料だった保護者にも一回二百円の負担が必要となった。運営を支える国からの報酬体系が変わる十月以降は、最大で七百円に値上がりする。施設長は「子どもは早期に療育を受けることでどんどん変わる。負担が増えれば療育を受けるのが遅れたり、利用を控えたりすることが起こりかねない」と心配する。
 「障害乳幼児の療育に応益負担を持ち込ませない会」(京都市北区)の池添素事務局長は「支援法は乳幼児期の特性が何も考えられていない」と批判する。
 サービスを受けるためには障害程度の判定が必要となる。親ならわが子に障害があるとは認めたくない。しかし調査票には「他人に突然抱きつく」「突発的に通常と違う声を出す」といった質問が並ぶ。池添さんは「障害を受容する微妙な時期に、こんな質問は酷すぎる」と語気を強める。
 発達障害児通園施設・洛西愛育園(西京区)の高木恵子園長も「この法には発達支援や保護者支援という視点がない」と指摘する。
 洛西愛育園では園長らが地域の幼稚園や学校に出向き、問題を抱えた子の早期の発見と療育につなげている。また毎月丸一日を費やして保護者懇談会を持ち、適切な親子関係をはぐくんでいる。しかし新たな報酬体系では、施設の子どもを対象としないこれら活動は減収に直結する。
 高木園長は「保護者に正しい理解がなければ、子どもも親もストレスが重なる。そうなれば児童虐待にも結びついてしまう」と顔を曇らせる。ただでさえ困難を抱える保護者に、新たな心理的、経済的負担を課す恐れのある支援法。「これで親子とも幸せになれるのか」。児童福祉に携わる人たちの懸念は大きい。