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「自立」への壁 動き出した支援法

(6・完)「区分」の矛盾 〜「介護」と同基準に無理
福祉サービスを受けるのに必要な障害区分認定の調査票。政府は制度改正の先に介護保険との統合を狙う
 脳性まひの重度障害者香田晴子さん(四四)=京都市山科区=はコンピューターの出した答えにあ然とした。障害者自立支援法で介護の必要性を判定するソフトを試したところ、最も介護度の低い「区分1」とされてしまったのだ。
 支援法ではこれまで自治体によってばらつきのあったサービス支給を公正・透明にするとして、十月から「障害程度区分認定」の制度を導入する。サービスを受けるには、この区分認定が必要となる。障害の軽重や日常行動の能力など百六項目をコンピューターに入力して一次判定し、審査会の二次判定を経て、障害程度が六区分に分けられる。これを参考に、市町村がサービスの量を決める仕組みだ。
 この区分認定に対して、障害者の実情と乖離(かいり)しているという批判が強い。区分1とされた香田さんはひとり暮らし。調理や洗濯、外出など一日二−三時間の介助が欠かせない。しかしこの判定では介助が一切使えなくなる。「これでは生活していけない」と香田さんは憤る。
 原因は障害者福祉を介護保険制度へ近づけたことにある、と学識者は指摘する。支援法で導入された利用料の一割負担も区分認定も、実は介護保険の仕組みを取り入れたものだ。
 龍谷大の荒田寛教授(精神保健福祉)は「判定項目の約八割が介護保険の項目と同じという点に問題がある」と語る。在宅が中心の高齢者と違い、障害者は社会で活動し、自立生活を送る人も多い。そんな人たちの求める外出やコミュニケーション、家事などの支援の必要性が、この仕組みでは反映されにくい。「障害者と高齢者は体の状態も生活のニーズも違う。同じ物差しで計るのはおかしい」。
 精神障害者の当事者会「京都ユーザーネットワーク」事務局長の松井秀彦さん(五八)も「私たちは状態に波がある。調子が悪い時は毎日でもヘルパーに来てほしいが、いい時はひとりでできる。そうした特性がこれでは反映されない」と指摘する。
 介護保険の仕組みを導入する背景には、近い将来、障害者福祉を介護保険に統合しようという政府の思惑がある。介護保険の財源不足を解消するため、現在四十歳以上となっている保険料負担の年齢を二十歳などに引き下げて増収を図る一方、現在六十五歳以上の受給対象も広げ、障害者も対象にしようという考えだ。
 立命館大の峰島厚教授(障害者福祉)は「支援法は結局、財政論から議論が出発している。理念としてはよい面もあるが、それを動かす手だてがない」と厳しい。
 障害者自立支援法は誰のためのものなのか。その答えは、法の理念をどれだけ実現できるかにかかっている。おわり

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