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ウィニー事件 あす判決

違法コピー 「開発責任」判断
最終弁論後に記者会見する金子被告(9月4日、京都市中京区)
 ファイル共有ソフト「Winny(ウィニー)」を開発・公開し、映画やゲームのデータの違法コピーを容易にしたとして、著作権法違反ほう助の罪に問われた元東京大助手金子勇被告(三六)の判決が十三日午前、京都地裁(氷室真裁判長)で言い渡される。ファイル共有ソフトの利用者の違法行為で、開発者の刑事責任を問えるかを示す国内初の司法判断となる。最大の焦点の「被告がウィニーを開発・公開した意図」の認定内容は、今後の日本のソフト開発にも影響を与えそうだ。
 検察側はウィニーの機能、利用実態、金子被告の開発意図のいずれからも「もっぱら著作権法違反行為を助長するために作られたソフトだ」と主張する。被告が違法コピーの話題であふれるインターネット掲示板「2ちゃんねる」で開発を宣言し、バージョンアップ情報を繰り返し提供した点を挙げて「違法性を明確に認識し、著作権侵害を積極的に企図した確信犯だ」と断定した。
 動機については、捜査段階の供述や掲示板への書き込みから、「現在の著作権保護のシステムを根本的に破壊しようとした」と指摘している。
 これに対し、弁護側は「新しい技術の開発や検証が目的だった」と反論する。「ウィニーの各種機能が著作権侵害目的のためだとする検察の主張は、技術に対する無知、無理解からくる」と厳しく非難し、法廷でパソコンを使ってソフトの機能を説明したり、金子被告の著作を証拠として提出して、技術の中立性や卓越性を強調してきた。
 さらに、車で速度超過をした運転手の違反行為と、車を製造・販売した自動車メーカーの責任を例に挙げて「利用者の悪用を防げなければ、ほう助になるのか」と、ほう助罪の適用自体にも疑問を投げ掛けている。
 判決を間近に控え、検察側は「百パーセント有罪だ」と自信を見せる。弁護側は「勝訴を確信している」と話し、「無罪」と記した横断幕を準備している。
 著作権を管理する団体や、ソフト開発に携わるプログラマーも判決の行方を注視している。
 ゲームソフト会社などでつくる「コンピュータソフトウェア著作権協会」(東京都)は、現在も五十万人以上のウィニー利用者がいると試算し「流通する音楽や映像のデータの八、九割が著作権法違反に当たり、被害は深刻」と危惧(きぐ)する。その上で「会員にはソフト開発会社も含まれ、単純に有罪を期待するわけにもいかない。判決で、侵害の意図などの判断基準を明確に示してほしい」と注文を付ける。
 一方、ソフト開発者などでつくるNPO法人(特定非営利活動法人)「ソフトウェア技術者連盟」(大阪市)は、金子被告の逮捕後、インターネット上で自由に使える健全なソフトは全盛期の三分の一に減った、と指摘する。「『新技術が罪になるかもしれない』と、開発者の制作意欲が減退している。仮にソフトが不正に利用されても、開発そのものをほう助の罪に問うのはおかしい」と強く反発する。

金子被告語録

 金子被告はインターネット掲示板への書き込みや公判などで、ウィニーについてさまざまな見解を示した。象徴的な発言を拾った。
 「暇なんで(略)2chネラー向きのファイル共有ソフトつーのを作ってみるわ」(2002年4月、掲示板「2ちゃんねる」への書き込み)
 「ウィニーは違法にデータをやり取りするために生まれたようなソフト」(03年11月、京都府警の参考人聴取)
 「(開発は)技術的な実験として行っていたもので、著作権侵害行為の手助けという意図ではなかった」(04年9月、初公判の意見陳述)
 「(情報流出対策は)簡単なプログラム修正で1時間くらいあればできる」「(捜査段階の調べは)脅されていると思いました」(05年11月、被告人質問)
 「新しい技術を生み、表に出していくことこそが、私の技術者としての自己表現」(06年9月、最終意見陳述)

ウィニー事件の経過

2002年
   4月1日 金子被告がウィニーの開発を宣言。翌月に公開
2003年
 11月27日 京都府警がウィニー利用者2人を著作権法違反容疑で逮捕
2004年
   3―4月 府警などの捜査資料や陸上自衛隊の内部資料がウィニーを介して相次いで流出
  5月10日 府警が金子被告を著作権法違反ほう助容疑で逮捕
    31日 京都地検が金子被告を起訴
   9月1日 京都地裁で初公判
2006年
  3月15日 安倍晋三官房長官(当時)が会見で「情報漏えいを防ぐ最も確実な対策はウィニーを使わないこと」と発言
   7月3日 論告求刑公判。検察側が懲役1年を求刑
   9月4日 弁護側最終弁論。「ほう助に当たらない」と無罪主張
 12月13日 判決

(12月12日掲載)