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ウィニー開発者に罰金刑 京都地裁

著作権侵害を認識
金子被告の有罪判決を「不当」と訴える支援者(午前10時3分、京都市中京区・京都地裁前)
 ファイル共有ソフト「Winny(ウィニー)」を開発・公開し、映画やゲームのデータの違法コピーを容易にしたとして、著作権法違反ほう助の罪に問われた元東京大助手金子勇被告(三六)の判決が十三日、京都地裁であった。氷室真裁判長は「著作権者の利益を侵害することを明確に認識しながら、ウィニーの公開を続けた」として罰金百五十万円(求刑懲役一年)の有罪判決を言い渡した。「ウィニーは利用者の著作権侵害に重要、不可欠な役割を果たした。公開、提供が著作権者の権利に与えた影響は大きい」と、引き起こした結果の重大性を厳しく指摘した。

初の司法判断 罰金150万円

 ファイル共有ソフトの違法利用で、開発者の刑事責任を問う司法判断は国内で初めて。ウィニーを介した著作権侵害が続くなか、数十万人に上るとされる利用者への「警告」にもなりそうだ。
 氷室裁判長は「ウィニーはP2P(ファイル共有ネットワーク)技術の一つとして諸分野に応用可能で有意義なものであり、技術自体は価値中立だ」とした。ソフトの提供が違法かどうかは「利用状況や提供時の被告の主観面で判断される」と述べた。
 その上で、捜査段階の供述やホームページへの書き込みを基に「被告はファイル共有ソフトが著作権を侵害する形で広く利用されている現状を認識し、(違法)利用が広がることで既存のビジネスモデルと異なる新しいモデルが生まれることを期待して、ウィニーを開発・公開した」と判断した。ウィニーは匿名性が高く、利用者の著作権侵害を容易にした点も挙げ「不特定多数へのウィニー提供は、ほう助に当たる」と結論付けた。
 一方、「著作権侵害をまん延させようと積極的に意図していたと認められない」と検察側の主張を一部退けて、「新しいP2P技術を開発するという目的もあった」と述べ、罰金刑にとどめた。
 弁護側は「開発・公開は技術の検証が目的で、著作権侵害の意図はなかった」として無罪を主張していた。金子被告は十三日中にも控訴する。
 判決によると、金子被告はウィニーを開発し二〇〇二年五月にホームページ上で公開し、群馬県の男性ら二人=有罪確定=にウィニーを提供し、映画データなどの著作物の違法コピーを助けた。

【解説】技術自体 断罪せず

 京都地裁の判決は、違法な使われ方が広がっている状況で、改良を重ねてソフトを提供し続けたことに「犯意」を見いだし、合法と違法を分かつ境界線を示した。「技術自体は価値中立的だ」とあえて明言し、ソフト開発自体の責任を問うことに慎重な姿勢を示した半面、いまだウィニーを利用した著作権侵害が横行している現状に警鐘を鳴らした判決といえる。
 逮捕当初から「技術が悪用されると罪に問われるなら、プログラム開発はできない」と反発する技術者たちがいた。情報流出問題も絡んでウィニー自体を「犯罪」とみなすイメージが広がり、こうした懸念を増幅させた。だが、判決は技術そのもの、開発そのものを断罪したわけではない。
 技術は常に有用性と危険性を併せ持つ。多くの新技術は、開発した組織内で悪用される可能性や欠陥について検討を重ねながら、世に送り出されてきた。しかし、ウィニーはたった一人のプログラマーが、現行の著作権保護の在り方に変更を迫るような技術をわずか一カ月余りで生み出した特異なケースだった。そして、著作権法など既存の枠組みとの調和を探る時間も環境も整わないうちに、爆発的に普及してしまった。
 インターネットがますます社会へ浸透するなか、今後も同様の問題が繰り返される懸念もある。技術者たちに高い倫理が求められるとともに、新しい技術をどう使うかという利用者のモラルも問われている。

判決要旨

 【ほう助の成否】
 ウィニーが正犯者の実行行為の手段を提供、容易にしたほか、匿名性があることで精神的にも容易にした。
 もっともウィニーは、さまざまな分野に応用可能で有意義なもので、被告がいかなる目的のもとに開発したかにかかわらず技術自体の価値は中立的で、技術を提供すること一般が犯罪行為となりかねないような無限定なほう助犯の成立範囲の拡大は妥当でない。技術を外部へ提供する行為に違法性があるかどうかは、その技術の現実の利用状況や技術への認識、提供する際の主観的態様などによる。
 被告がサイト上で、違法なファイルのやりとりをしないよう注意書きをしていたことを考慮しても、ファイル共有ソフトがインターネット上で著作権を侵害する状態で利用されている現状を十分認識しながら認容し、そうした利用が広がることで、これまでにないビジネスモデルが生まれることを期待しウィニーを開発、公開しており、これを公然と行えることでもないと意識していた。
 ただし、ウィニーによって著作権侵害がネット上にまん延すること自体を積極的に企図したとまでは認められない。
 被告は、ウィニーの開発、公開は技術的検証が目的だと供述し、その部分は信用できるが、被告の主観的態様と両立しうるものである。
 ウィニーなどのファイル共有ソフトを利用してやりとりされるファイルのかなりの部分が著作権の対象となり、ウィニーは著作権を侵害しても安全なソフトとして取りざたされ、広く利用されていた。被告はそのような現実の利用状況を認識、認容しながらウィニーをホームページ上に公開し、不特定多数の者が入手できるようにした。正犯者がウィニーを匿名性に優れたファイル共有ソフトであると認識したことを契機とし、公衆送信権侵害の行為に及んだことが認められ、被告の行為はほう助犯を構成する。
 【量刑の理由】
 被告はウィニーの利用者の多くが著作権者の承諾を得ないで著作物ファイルのやりとりをし、著作権者の有する利益を侵害するであろうことを明確に認識していたにもかかわらず、ウィニーの公開、提供を継続していた。被告は、社会に生じる弊害を十分知りつつも、その弊害を顧みることなく、あえて自己の欲するまま行為に及んだ。独善的かつ無責任な態度で、非難は免れない。
 ウィニーは正犯者らの行為に重要かつ不可欠な役割を果たし、ネットワークにデータが流出すれば回収は著しく困難で、利用者が多数いる。ウィニーの公開、提供という行為が著作権者の有する公衆送信権に対して与えた影響の程度も大きく、正犯者らの行為によって生じた結果に対する被告の寄与の程度も少ないものではない。
 もっとも被告は著作権侵害の状態をことさら生じさせることを企図していたわけではなく、著作権制度が維持されるためにはネット上で新たなビジネスモデルを構築する必要性があることを視野に入れながら、ウィニーを開発、公開していたという側面もある。直接経済的利益を得たとも認められない。
 以上、総合的に考慮して被告を罰金刑に処するのが相当と判断した。

≪ウィニー≫
 個人のパソコン同士が音楽や映像などのデータを直接やりとりして、共有するためのソフト。ウィニーを起動させたパソコンはネットワークを形成して、データをバケツリレー方式で転送するため、第一発信者の特定が困難とされる。こうした特性から映画やゲームなどの著作物データが許可なく流通し、著作権侵害の温床と指摘されている。ウイルスに感染して意図しないデータが流出すると、多数のパソコンにコピーが残って回収不能となるため、警察の捜査資料や自衛隊の内部情報、企業の顧客情報などの漏えいが社会問題になった。