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ふるさとの星

村の夢、エネルギーに
1、2年生全員とランニングする須河沙央理さん(前列右)と兄の宏紀さん(同中央)=富山県南砺市・利賀中
 周りは山、山、山…。雪化粧した山肌が眼前に迫ってくる。村の中心部で標高六〇〇メートル。岐阜県境に近い山間部にある富山県南砺市利賀村が駅伝で沸いている。
 全校生徒わずか三十五人の利賀中から初めて、二年生の須河沙央理さん(一四)が県代表に選ばれた。三人兄妹の末っ子。一つ年上の二男宏紀君(一五)も二十一日、広島市である男子の都道府県対抗駅伝の県代表になった。山下均校長(五三)は「小さな学校から代表になった。大きな価値があります」と笑顔で胸を張った。
 学校にはバドミントン部しかなく、沙央理さんは部活が終わった後、宏紀君とナイター照明がある旧村営グラウンドで走る練習をする。身長一五六センチ。無理のないフォームで軽やかに走る。昨年夏の全国中学選手権千五百メートルで8位に入賞し、実力は全国の中学生でトップクラスだ。
 指導する県チームコーチも務める能直樹教諭(四六)は「まじめで気立てがいい。嫌と言わない子です」と目を細める。雪でぬかるんだグラウンドを長靴で走る生徒もいる。豊かな自然の中で子どもたちは伸びやかに育っている。
 二〇〇四年に南砺市に合併したが、利賀村のそもそもの人口は約八百三十人。小さな村から大舞台を走る子どもが生まれ、住民たちはじっとしていられなかった。兄妹が夜、練習するグラウンドを住民たちの手で整備し、PTAが中心になって「利賀魂」と書いた激励Tシャツも作った。
 レースの日は、利賀行政センターが行政無線とケーブルテレビで沙央理さんへの応援を呼び掛ける。中谷信一センター長(五八)は「子どもが少なくても、目標を持って頑張れば達成できることを示してくれた」と喜ぶ。
 「地域の応援はエネルギーになります」と素直に感謝する沙央理さん。「応援してくれる人のためにもいいところを見せたい。中学生チャンピオンの人と競り合いたい」と目を輝かす。
 京都に多い利賀村出身者も応援準備を始めた。かつて養蚕が盛んだった地域。西陣とのつながりで京都には村の出身者が多く「京都利賀享友会」をつくっている。「山の中を毎日上ったり、下ったりしている。利賀の子は強いはずです」。会長の笠原外木蔵さん(六九)=京都市北区=はレースの日を待ちわびる。
 それぞれの郷土のチームを応援するふるさと対抗の魅力が都大路のレースを盛り上げ、その熱気が選手を育ててきた。二十五年。ふるさとの熱気は少しも衰えていない。
【2007年1月4日掲載】