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立場を変えて

熱走の記憶、次世代へ
全国高校駅伝の時に京都を訪れ、中学生のメンバーと話す樽本さん(左端)=昨年12月24日、京都市右京区・西京極陸上競技場
 昨年十二月二十四日、全国高校駅伝に合わせ、兵庫チーム監督の樽本(旧姓福山)つぐみさん(三八)=兵庫県姫路市=はコーチとともに中学生のメンバー四人を連れて京都を訪れた。レース前の選手の準備ぶりを見せ、沿道の熱気にもじかに触れさせた。翌朝は暗いうちに中学生の走るコースを試走させ、中継所での待機場所やトイレを確認させた。
 「トイレは込むから、時間に余裕を持って」。樽本さんらの助言は細やかだ。兵庫チームは今回から指導陣を代え、監督とコーチ二人を全員、都大路を走った代表OGで組んだ。樽本さんは中学二年で一回大会を走って以降、選手で十三度、コーチで六度チームに加わり、この駅伝とともに競技人生を歩んできた。
 無名の中学生だった一回大会は1区を2位で走り周囲を驚かせたが、本人には「年上の人と仲良くなり楽しかった」大会だった。阪神大震災翌年の十四回大会はコーチで、復興支援に感謝する「ありがとう」と書かれた鉢巻きを全員で締めた。「女子駅伝では悔しいこともあるけど、楽しかった思い出が一番」と振り返る。
 兵庫チームには一回大会から長くコーチ、監督を務めた女性がいた。「緊張を和らげて力を発揮できる雰囲気をつくってくれていた」。感謝の気持ちとともに思い出す。
 幼い娘二人の母。兵庫大健康科学部の助手に就き六年目で、部員七人だけの陸上部監督も務め、自らも年に数回、マスターズのレースに出る。昨秋、兵庫陸協から監督就任の打診を受けた。選手を強くした実績がなく戸惑ったが、体育教師の夫にも励まされ「この機会に頑張れと言ってもらえている。経験を生かして恩返ししたい」と引き受けた。
 毎日、早朝に自宅近くを一人で走る。頭の中に都大路のコースを描きながら、選手に伝えたいことを思いついてはメモに取っている。
 中学教諭でコーチの渋谷優美さん(三六)=同県三木市=は、高校駅伝に合わせた中学生合宿の発案者だ。自らも中学時代に走った。「私は舞い上がって失敗したけど、この子たちには力を出させたい」と、中学生たちに優しいまなざしを注ぐ。
 兵庫は過去三度栄冠に輝き、有力選手をそろえた今回も優勝候補に挙がる。樽本さんはこの駅伝を走るのが楽しく、それが長く活躍する力になった。選手たちが強くなって帰ってきたくなる素晴らしいチームにしたい。そういう思いを込め、メンバーが顔をそろえる八日、選手たちにはまず「このメンバーで走る出会いを大切に」と話す。
   =おわり
【2007年1月7日掲載】