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指導者の世代交代

”団塊“退職、継承に課題
全日本実業団女子駅伝で7度目の優勝を果たした三井住友海上(2009年12月13日=岐阜市)
 女子マラソンの土佐礼子さんや渋井陽子を育て、全日本実業団女子駅伝で三井住友海上を6度の日本一に導いた鈴木秀夫総監督(57)が昨年3月、勇退した。チームを引き継いだのはコーチとして支えてきた渡辺重治監督(40)。17歳年下の指揮官は昨年末の同駅伝を制し、鮮やかな世代交代を印象付けた。
 鈴木前監督は勇退の理由を「マンネリというか、(辞める前は)選手を故障させないように持っていくだけになった。攻めの気持ちが欠けてきた」と振り返る。力をつけた選手の調子を維持すれば勝つことはできた。だが、指導面で守りに入ったという自らの姿勢を見極め、あっさりと退く決断を下した。
 スムーズなバトンタッチができた背景には、渡辺監督への信頼があった。土佐や渋井のマラソン練習に付き添うためチームを離れる時でも、残る選手のことはコーチだった渡辺監督に安心して任せた。「コーチという領分に徹し、監督のわたしの考えをしっかりと理解してくれた。留守中にコーチが監督と異なることを言うと、チームは分裂する」と鈴木前監督。10年以上の長い期間を共にし、少しずつ世代交代の準備が整っていった。
 実業団の監督に定年はない。自ら辞任を決意するか、契約期間を終える時が”その時“だ。しかし誰もが、永久に監督を続けられるわけではない。高校や中学で指導する教諭には、定年という区切りもある。いま、「団塊の世代」の大量退職時代に突入している。
 近年、男子の全国高校駅伝で西脇工(兵庫)を8度の優勝に導いた渡辺公二前監督をはじめ、各地で名将と呼ばれた指導者の勇退が目立つ。京都新聞社が行った全国女子駅伝出場チームへのアンケート調査によると、定年などを迎えた指導者のノウハウが継承されているかという質問に対し「はい」という回答は16チームにとどまっている。
 指導者の経験を次の世代に伝えることは、競技の発展に欠かせない。全国女子駅伝の京都チーム監督を6度務めた立命館宇治高の荻野由信監督は「10回やって9回は失敗するほど陸上の指導は難しい。これまで何度も同じ失敗をして身につけてきた」と話す。だからこそ自らの経験を若い指導者に伝えたいと言う。求められれば、練習方法も惜しみなく明かしてきた。
 三井住友海上の渡辺監督は、監督として初優勝した全日本実業団女子駅伝のレース後、「(監督に)立場が変わったというのは大きいし、重い。大変なプレッシャーでしたが、選手はよくついてきてくれた」とほっとした表情を見せた。これから何人の新しい指導者が、次の世代を担う選手を育てられるか。長距離の将来が懸かっている。=おわり
【2010年1月12日掲載】