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(2)検証 トレーニング

20キロの練習では選手育たない?
【上】早大で活躍後、実業団のエスビー食品でマラソンを走る花田勝彦・現上武大監督(2001年3月)。【下】今年の箱根駅伝で18年ぶりに総合優勝し、胴上げされる渡辺康幸監督(11年1月)。
 「今のマラソン界に魅力がないことが問題ではないか」。トラック長距離でアトランタ、シドニーと2度の五輪に出場した花田勝彦・上武大監督(彦根東高−早大出)は、トレーニング方法の問題ではなく、マラソン人気の低迷が不振の原因と考えている。
 かつての男子マラソン界には、スター選手がひしめいていた。ロサンゼルス五輪代表の瀬古利彦さんや宗茂、猛兄弟、バルセロナ五輪銀メダルの森下広一さん…。花田監督は早大の先輩だった瀬古さんにあこがれ、マラソンを志した。箱根駅伝を制した大学時代。最初の3年間はまず、20キロのハーフマラソンに耐えられる体をつくるための厳しい練習に明け暮れた。

■マラソンの7割
 箱根駅伝を頂点とする現在の関東学生長距離界では、箱根駅伝の平均区間距離となる20キロを走れる選手の育成が第一目標とされる。ここに「20キロとマラソンは全く違う種目。20キロの練習ではマラソン選手は育たない」との批判が生じる。
 だが、世界選手権アテネ大会のマラソン代表でもある花田監督は、この見解を否定する。「学生たちの練習はマラソン練習の7割に達している。あとは、ちょっとした意識の変化で十分に戦える」と言い切る。
 7割の力を持つ選手たちをマラソン挑戦にどのように導くのか。花田監督は「マラソンを経験した者が競技の魅力を伝えていく必要がある」と自らに言い聞かせる。

スピード強化に役割 必要なのは意識の変化

【上】五輪女子マラソンで日本初の金メダル。日の丸を手に笑顔でウイニングランの高橋尚子(2000年9月シドニー五輪)。【下】駅伝でマラソンのスピードを磨いた山口衛里・岡山チーム監督(10年1月)
■駅伝やりながら
 今年の箱根駅伝で18年ぶりに総合優勝した早大の渡辺康幸監督も「今は私の時代より良い選手がたくさんいる。そういう選手がこの先、どんなモチベーションで競技を続けられるかが問題」と力を込める。
 渡辺監督は早大時代、箱根駅伝を一つの目標にしながら、世界の舞台を見据えた猛練習をこなしてきた。1万メートルで世界選手権出場やユニバーシアード優勝を果たし、「日本のエース」として将来を嘱望された。しかし、けがのために五輪代表を辞退、マラソンにも挑戦したが、結果を残せず、29歳で引退した苦い経験を持つ。
 最終的にマラソンに挑むかどうかは本人の問題としつつ「個人的には駅伝をしながらマラソンを目指すのが一番良いと思う。(駅伝強豪の)旭化成やエスビー食品、中国電力も五輪選手を出している。女子もそう。高橋尚子さんも野口みずきさんも実業団駅伝を走っている」と熱っぽく語る。

■女子は最長10キロ
 女子の五輪経験者も、駅伝に向けた練習が必ずしもマイナスとは考えていない。シドニー五輪女子マラソン代表の山口衛里岡山チーム監督は「駅伝で培ったスピードがマラソンに生かせる」と経験を振り返る。さらに、女子の駅伝区間は最長でも約10キロで、男子ほどの負担は生じない。「駅伝を走ること自体が、マラソンに欠かせない実戦スピードを養う重要なトレーニングになる」