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(5・完)指導者からの提言

長距離人口 底辺を拡大
藤田信之=ふじた・のぶゆき 1940年京都市生まれ。洛北高で中距離選手として活躍。日本レイヨン(現ユニチカ)で指導を始め、ワコール、グローバリー、シスメックス監督を歴任。ワコールで全日本実業団女子駅伝4連覇。全国女子駅伝では京都を4連覇に導いた。日本実業団連合強化委員長。
 −実業団指導が長い。
 「走る選手や応援の人の多さなど、企業側から見るとマラソンより駅伝の方が盛り上がると感じているようだ。駅伝がなくなれば、チームを持つ企業はなくなるのでは。駅伝があったから長距離人口が増え、底辺が広がった。底辺が広くなければ高い山は築けない」
 −企業の要望で駅伝中心の活動になるのか。
 「ワコールの時は、トラックで日本一のチームを目指した。中距離から1万メートルまで選手がそろった結果、駅伝で勝てるようになった。駅伝に特化した練習はしなかった」
 「短距離や投てきと違い、もともと長距離にオフはない。冬場の練習も走ること。どうせ走るのなら、レースという目標がないと身が入らない。クロスカントリーか駅伝ということになる」
 −マラソンの低迷は。
 「選手が厳しい練習をやりたがらず、指導者もやらせようとしないから。マラソンの練習は『修行』そのもの。選手が苦しさに負けそうになった時、指導者が『このまま駅伝選手で終わるか、オリンピックのメダリストになるか、一生の問題として考えてみろ』と目を開かせてやらないと」
 「指導者側にも問題があるのでは。駅伝に出てそこそこの成績を残せば、給料がもらえる。その結果、駅伝のための練習で終わっている。指導者も選手もサラリーマン化している」
 −大学がレベルアップしている。
 「少子化の中で、大学が広告宣伝に躍起になっている。その結果、箱根駅伝が過熱している。女子も大学駅伝ができているが、区間距離は短い。トラック練習の延長線上でできるはずだ」

粘り生み 強い心育てる

伊東輝雄=いとう・てるお 1945年、京都市生まれ。京都商(現京都学園)高で全国高校駅伝に、国士舘大では4年連続で箱根駅伝に出場。1973年に京産大へ赴任。陸上部駅伝監督として男子を関西学生対校駅伝26連覇などに導く。京産大教授、京都陸協副理事長。
 −マラソンにない駅伝の魅力は。
 「基本的に陸上は個人競技。駅伝は自分一人だけが強くても勝てない。仲間と力を合わせて戦うことで実力以上の力が発揮できる。周囲に引っ張られてタイムが伸びることがある。長距離選手として強くなる過程において、駅伝は極めて有効で大切なものだと思う」
 「マラソンにチームワークは不要というかもしれないが、そうではない。マラソンで戦える選手は『絶対に負けない』という強い心が必要。レースでは粘り通さないといけない。抜かれた事実を仲間の責任にできない駅伝では、自分の走りに対する責任感が鍛えられる。その気持ちはマラソンに通じる」
 −駅伝は複数の選手が走る。
 「いろいろな個性を持った選手がいるので面白い。指導者としては、選手の個性に合わせた練習のやり方がある。みんな同じやり方では伸びない。中学や高校で弱かった選手でも、練習のやり方によっては強くなり、実績のある選手に勝つことができる。そういう個性の固まりが、一つのチームとして戦うことも一つの魅力だ」
 −どのような指導を心掛けているのか。
 「うちは4年間で強くなってくれたらいい。関西は箱根駅伝のように長い距離のレースもなく、無理に追い込んだ練習をしなくてもいい。(2005年世界選手権男子マラソン代表の)細川道隆も練習をこなせるようになったのは3年生の後半から。筋力、栄養、骨格など、時間をかけた体の基礎づくりが最も大切で、将来のマラソンに生きると思っている」