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「真剣勝負が気持ちいい」 奔放人生を「軌道修正」

ドラムに熱中する 田中由紀さん(57)=左京区
レッスンスタジオで、ドラムを軽快に叩く田中さん(京都市北区・ミュージックラボ)

 軽快なギター音の前奏が流れ、スティックを持つ手に力が入る。若者に人気のバンド「バンプ・オブ・チキン」のヒット曲「天体観測」だ。両手、両足で巧みにリズムを刻む。「バスドラムの鳴らし方がリズムに合ってないのでは」との先生の指導に、「はい」と素直に応じる。

 同世代の愛好家がスローテンポな曲を選ぶのに対し、この曲をかっこよくたたく中学生の姿を見て感動した。「テンポが速くてドラマーって感じがするでしょ」。先日の発表会でも違うロックバンドの曲で舞台に立った。

 仕事は美容師。中学卒業後「学校の勉強がとにかく嫌いだった」とこの道に進んだ。阪神大震災の年、好きな人を追って岡山へ。古里の京都を離れてなじめず、恋人とも続かない。失意の日々の中、昔から好きなイタリア映画「道」を見た。「大道芸人役のアンソニー・クインが太鼓のスティックを持っている手が柔らかくて。できたらええなって」。あこがれ、音楽教室に通い始めた。

 五年ほど前に京都に帰り二年前に店を開いた。人生を自由奔放に過ごしてきた思いがある。「何に対しても『まあええやーん』って雑やから、ドラムのレッスンの真剣勝負みたいな空間が気持ちいい。軌道修正というか、勉強を投げ出していた幼いころの自分への反動というか」。はさみをスティックに持ち替えるこの時間は何もかも忘れられる。

【2007年3月19日掲載】