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「寂しさや孤独は大人の世界」 見つけた「自分の道」

型染め作家で会社員 谷美巴子さん(59)=上京区
29歳で型染めを知り、針仕事をする母の手を何度か題材にした。「今でも29がわたしのラッキーナンバー」(京都市上京区)

 「奥さん」だった自分に転機が訪れたのは二十九歳のとき。子どもができず、同世代の友人と話が合わない。自分だけ取り残されたような気持ちを抱え、もんもんとした気持ちでカルチャー教室の扉をたたいた。初めて知る型染めの世界に「道が開けた」。やっと打ち込めるものを見つけたと思うと、涙が出た。

 三十歳で離婚。働く必要に迫られ建設会社に就職した。通勤時間を惜しんでバス内でスケッチブックを広げ、かぜで寝込んでも下絵を描いた。搬入前に徹夜しても会社で疲れた顔はできない。「仕事のせいにしないためには、仕事を一生懸命やるしかない」。切り替えながら両立させ、四十五歳で日展に初入選した。

 今年八月に定年退職する。与えられた仕事を「処理」する事務と、ゼロから「創造」する型染めは性格が相反したが、「うちらの世代はバイタリティーに富んだ人が多いのよ」と笑う。食いぶちをかせぐためだった会社生活は、我慢することや、人付き合いの仕方を教えてくれた。

 日展会友になった二〇〇四年、相次いで母と父を亡くし、一人きりになった。「寂しさや孤独と向き合うのは大切な大人の世界。逆手に取って作品に生かしたい。作風が抽象的になるかも」。定年後は絵を主軸に、いろいろな表現方法に挑戦するつもりだ。

【2007年7月27日掲載】