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「困っている人に何とか応えたい」 天職、子ども抱え奮闘

義肢や福祉器具の製造・販売会社の3代目 大井和子さん(58)=西京区
義肢作りに熱意を注ぐ大井さん(京都市上京区)
 小学生のころ、近所の神社の前を通るたび、片足のないおじさんがアコーディオンを弾いていた。「何で足の代わりがないんだろう」。ズボンのすそを結んだ姿がずっと目に焼き付いていた。

 それから約五十年。義肢装具などを扱う「大井製作所」(京都市上京区)を守る。サラリーマンの家庭に育ち、高校では当時はやっていたフォークソングに夢中だった。短大を卒業し、結婚した夫の実家が今の会社を経営していた。それまで義肢を作る仕事があると知らず、工場を見て感激。「運命を感じた」

 しかし、三十五歳のとき夫が亡くなった。「自分の代でつぶしてはいけない」。子どもを抱え、社長として奮闘した。義肢は、細っていく体に合わせるなどアフターフォローが欠かせない。義肢を付けた人が喜ぶたび、涙があふれる。「天職だと思っている」とさわやかに言い切る。

 乳がんの摘出手術に悩んでいる間に亡くなる女性が多いと聞き、自然に見えるフランス製の人工乳房を探し出した。「冬場は車いすのハンドルが冷たく、滑る」という声を聞き、スチール製のハンドルを覆い、衝撃も吸収するテープを考案した。「困っていることに何とか応えたいという気持ちが強いのかも」と笑う。

 小学生らに義肢などの話をするのをライフワークにする。「ハンディキャップのためにその人の値打ちが下がるわけじゃない。みんな一緒ということを若いうちに分かってもらいたい」

【2007年11月2日掲載】