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「ものづくりは暮らしの潤滑油」 刺しゅうで自由に表現

テキスタイルアーティスト 奈良平宣子(59)=左京区
「ものづくりは、すごく楽しい」と話す奈良平さん(京都市左京区)

 ミシンで刺しゅうを施した白い布を飾る。すると、空間に影ができ、雰囲気が変わる。布は、見る角度、当たる光の強弱によって異なる色合いを醸し出す。「布の七変化が魅力なんです」

 瀬戸内海に浮かぶ広島の生野島で生まれ、京都で育った。洋服を縫ったり、編み物をしたり、幼いころからものづくりが好きだった。「ミシンをよく壊し、親にしかられました」と目を細める。

 京都市立芸大(西京区)では染織を専攻。より質感のある表現を追い求め、たどり着いたのが刺しゅうだった。「縫えば縫うほど形が変わり、立体的になる。糸一本で絵を描くように自由に表現できる」。以来、テキスタイルアートを約二十年続けている。

 昨年三月まで京都嵯峨芸術大短期大学部(右京区)で教授を務めた。教育と創作、家庭生活をバランスよく続けることを心掛けた。それで得たのは「ものづくりは暮らしの潤滑油」ということ。「忙しくても、物を作っていると楽しく、気分が晴れます」

 教職を退き、次の十年の生き方を考えた。日本人から物を大切に作る心が薄れている風潮を不安に感じた。「ものづくりの素晴らしさを伝えるために、できることがあれば創作を通じてやっていきたい」。目標が決まった。

 「若いころのようにガツガツと活動はできないけど」。控えめだが、自信を感じさせる表情で話した。

【2008年2月29日掲載】