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(8・完)職場の窓から社会見えた

介護と子育て 追われる毎日 「何かしたい」。仕事シェア
カレンダーに働ける日をマークする高田さん(右)。2人分の仕事を7人で分担する。「子育てや介護と、働くことは二者択一ではない」(10日、宇治市槙島町)

 宇治市槙島町の集会所を利用した子育て広場「まきしまMove(むぅぶ)」。スタッフの女性7人は仕事の合間に、事務室にあるカレンダーに、自分の働ける日をマークする。これをもとに、ワークシェアリング(仕事の分かち合い)を決める。

 Moveは週4日、主に0〜3歳の子と親の交流の場を提供している。宇治市の委託事業で、2人分の人件費として約24万円を受け取っている。この2人分の仕事を7人で分担し、子育てアドバイザーとして週1、2回ずつ働く。スタッフは30〜50代で、子育て中の母親が中心だ。

 スタッフの一人、高田悦子さん(40)は今、小6の息子を育てながら働いている。出産を控えた1998年2月、母親がくも膜下出血で倒れた。間もなく、介護と初めての子育てが同時に始まった。

 妹に手助けしてもらったが、介護と子育ての毎日に、気持ちは24時間、追われた。

 「女性にとって、子育てや介護と、働くことは二者択一。働くことはゼロか100しかない」。そう感じた。だから、結婚前のように、働けるなんて思えなかった。

 母親のリハビリが順調に進み、少し自分の時間ができた。「何かしたい」。思いは強まった。市主催の催しで、女性の新しい働き方の実践を進める「働きたいおんなたちのネットワーク」のメンバーに出会い、ワークシェアを知った。まず月1、2回だけ子どもを預かる仕事を始めた。

 「働きながらでも、病院の送り迎えや学校に行く時間もできる。ワークシェアなら私も働ける」。Moveの開設スタッフに、手を挙げた。

 スタッフの木村郁子さん(40)は、Moveの利用者だった。子どもと家にいると、社会から取り残されていると感じていた。仕事をしたくて、家で勉強して社会福祉士などの資格を取った。でも、フルタイムでの労働では、子どもの世話ができないと悩んでいた。そんな時に、Moveのスタッフに誘われた。下の娘が幼稚園に行っている時間帯の半日だけ働き始めた。

 子どもの病気など急に休むときには、他のスタッフがピンチヒッターで入ってくれる。逆もある。互いに助け合って、仕事を続けている。

 7人が集まるスタッフ会議は、互いのことを話し合う大切な時間にもなっている。高田さんは「仕事だけのつながりじゃなく、悩みも相談しあえる。広場に来るお母さんだけでなく、私たちにとっても居心地のいい場所です」。

 広場のテーマは「小さな小さな、ご近所づくり」。Moveでの出会いをきっかけに、まちで出会って、あいさつできるようになり、居心地のいい「ご近所」が地域に広がってほしいとの願いが込められている。「私たちにとっても、ここは社会に出て行く小さな、はじめの一歩です」

働く私踏み出す一歩に 遅出早退に配慮、保育ルーム…

スタッフの母親が編集会議を進めるフロアで、祖母世代のサポーターが子どもたちを見守る(9日、京都市上京区・おふぃすパワーアップ)

 子育て中の母親が働き続けることのできる新しいかたちが、各地で芽生えている。

 南丹市園部町の老舗旅館「小島屋旅館」内に昨年6月、オープンした「子育てcomiカフェこじまや」。5人のスタッフのうち、4人は子育て中の母親だ。地元産の米や野菜のランチを提供するだけでなく、先輩ママとして、やって来たお母さんとおしゃべりし、子育てのちょっとした悩みを聞き、助言する。小学生の娘と息子のいる事務担当の田茂井由美子さん(45)は「仕事を始めたことで社会の一員になれた気がする」と話す。

 食材宅配会社「ヨシケイ滋賀・ヨシケイ京都(大津市)」は、女性従業員の半数以上が子育て中で、母子家庭が従業員の3割を超える。同社は、育児時間を確保するため、1カ月間に計7時間、3回まで減給せずに遅出、早退ができるようにし、昇級にも影響しないよう配慮している。子どもの病気などのピンチには、他の従業員が、営業・配達エリアをカバーして配達している。

 近江八幡営業所長の相川智子さん(40)は一人で中学3年と小学5年の息子を育てている。「子どもを育てる気持ちがわかるから、出て来られなくなった従業員には『大丈夫、フォローするから』と言って休んでもらう。その分、次は頑張ってもらえますから」

 京都市上京区にある子育て支援のNPO法人「おふぃすパワーアップ」の事務所。春に発行する幼稚園・保育園の情報誌について、女性スタッフが編集会議をする。その横で、彼女たちの子どもが遊んだり、泣いたり。サポーターの西村和美さん(73)が抱っこして「消防車が来たよ」とあやす。

 一昨年10月に事務所を移転した際に、仕事場の中に保育ルームを確保した。丸橋泰子代表(56)は「3世代同居の職場」に胸を張る。「子どもが見える場所にいないと、お母さんも不安で仕事に集中できない。年配サポーターの子どもの接し方を見てもらうのも狙い。この職場をステップに、自分の仕事の能力を上げ、やりたいことにチャレンジしてほしい」

 子育て女性の再挑戦を支援する「働きたいおんなたちのネットワーク」の吉田秀子理事長(60)は「子育てや介護に時間をとられたり、体や心の不調は、誰でもある」と語る。「大切なのは、そんな女性を受け止めて働ける場。子育て文化を育んだり、地域を元気にしたりする仕事ができれば、本来の自分を取り戻せる」=第3部おわり

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【2011年2月26日掲載】