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インタビュー編

母のSOS インタビュー編

 連載「ひとりじゃないよ」の第3部「母のSOS」に続き、母子家庭などの貧困構造を調査、研究する佛教大の金澤誠一教授と、子どもや子育て家族のソーシャルワークを専門とする京都ノートルダム女子大の桐野由美子教授に聞いた。社会のひずみが母親に押し寄せるなか、2人はそれぞれ、母親が声を出すことの大切さや専門職でない市民が「隣のおばちゃん」として子育て支援できることを強調した。

京都ノートルダム女子大教授(子ども家庭福祉)桐野由美子さん 

きりの・ゆみこ 1951年生まれ。米アラバマ州立トロイ大カウンセリング学修士取得。関西学院大博士課程修了。米国でソーシャルワーカーを経験。「子ども家庭支援員マニュアル」(編著)。

訪問支援 隣人も共に

 国の施策による乳幼児を育てる家庭への訪問は、「こんにちは赤ちゃん事業」や、虐待に向かうリスクのある家庭への「養育支援訪問事業」がある。保健師や助産師ら専門職と一緒に子育て経験豊富な「隣のおばちゃん」が訪ねれば、お母さんが気軽に相談できる人となる。

 「隣のおばちゃん」も意欲があり、研修を受けて経験を積めば、「準専門職」として活躍できる。「ホームスタート」というイギリスの民間団体から生まれた家庭訪問プログラムも日本で始まっている。地域の拠点づくりが必要だが、広がりを期待したい。

 行政は家庭支援事業を抱えがちだが、専門職は限られている。きちんと研修プログラムを実施し、地域のニーズにあう事業で成果を挙げた民間団体に恒常的に予算を出す市町村が増えることが望まれる。

 虐待を防ぐために、暴力の肯定を改めるべきだ。子に手をあげるのをしつけとする考えが根強いが、しつけがエスカレートすれば虐待になる。子どもも、親に殴られるのは自分が悪いせいと思っている。

 子どもの世代から時間をかけ、どんな暴力もいけないとする意識をみんなで持つため、CAP(子どもへの暴力防止プログラム)を親子で受けてほしい。子どもの時に親にたたかれ「つらかった」という気持ちがあれば、自分の子どもにしなくなる。しつけもゆっくり変わっていくと思う。

 子育てに悩んだら、子育てや親子関係について匿名で電話できるホットラインや24時間SOSがある。電話相談は、絶対に母親を否定し説教することはしない。ストレスで子どもに当たるのは、誰にでもあること。それがエスカレートしないよう、助言してくれるはず。加害者になる可能性はお母さんだけではないので、お父さんも相談してほしい。

佛教大教授(社会政策論)金澤誠一さん 

かねざわ・せいいち 1948年生まれ。中央大大学院修士課程修了、亜細亜大大学院博士課程などを経て99年から現職。著書に「現代の貧困とナショナルミニマム」(編著)など。

母子世帯 負担軽減を

 育児と仕事に追われる母子世帯の母親が日常生活で最も困るのは、子どもが急病にかかった時に預ける先がないことだ。

 近くに頼れる親類もなく、仕事を休まざるを得ないことで最悪の場合は解雇に至る。孤立した母親が気軽に相談できる場を作り、日ごろから地域との接点が醸成されていれば、困った時に助けてもらえる場合もあるだろう。

 若い母親の子育てサロンは近年、各地で生まれている。しかし、母子世帯の母親が互いに悩みを語り合い、困った時に支え合う関係を築ける場はまだまだ乏しい。多くは非正規雇用なので職場でも結束する機会が少なく、声が社会施策に反映されてこなかった。

 昨年末から全国に広がった「タイガーマスク現象」は、支援の潜在的な意欲が社会にあることを示した。母子世帯がつながり、求めることを地域に発信する仕組みがあれば支援の輪は広がるだろう。

 国は現在、社会保障の在り方を行政による保護型から住民の参加型に見直そうとしている。行政職員らが担っている子育て支援や訪問型の保育サービスなどへ住民に参加してもらい、地域できめ細かい福祉を実現させるイメージのようだ。ただ、参加する側に十分な賃金を保障できるか不透明なので、支援が広がるかどうかは疑問だ。

 母子家庭に対しては、まず所得水準の底上げが欠かせない。母子世帯が健康で文化的な最低限の生活をするにはどれくらいの費用が必要なのか試算した。最も少ない「母親と幼児の2人世帯」でも年額約332万円で、現実の母子世帯の平均年収とは100万円以上の開きがある。これでは地域で人間関係を築く意欲すら起きない。貧困や低学歴の連鎖を止めるためにも、せめて母子世帯の教育費を軽減する施策が求められる。

<子育てについての主な問い合わせ先>

「悩みを聞いて」「虐待しそう」という人は…

◆京都府家庭支援総合センター「こども虐待 相談専用電話」
 TEL075(531)9900(平日午前8時半〜午後10時、土日祝日は午後1時〜午後10時。通報は毎日24時間対応)

◆京都市児童相談所「24時間子ども虐待SOS」
 TEL075(801)1919(毎日24時間)

◆滋賀県子ども・子育て応援センター「こころんだいやる」
 TEL077(524)2030(毎日午前9時〜午後9時)

◆滋賀県中央子ども家庭相談センター「児童 虐待ホットライン」
 TEL077(562)8996(毎日24時間)

◆全国子育て・虐待防止ホットライン
 TEL0570(011)077(平日午前10時〜午後5時、 土曜午前10時〜午後4時) 子どもへの暴力防止プログラムを知りたい人は…

◆CAPセンター・JAPAN
 TEL0798(57)4121

【2011年3月9日掲載】