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(5・完)新たな地縁 紡ぎたい

山間に新住民、高齢者送迎 存続の岐路 温度差越えた
「足元、大丈夫?」。過疎高齢化する集落で、お年寄りを診療所まで送る新住民(3月10日、高島市朽木古屋)=撮影・奥村清人

 その住民ボランティアは、存続の岐路にあった。

 京都府、福井県と接する高島市の上針畑地区。移住してきた新住民たちが3年前から、お年寄りを地域の診療所に車で送迎してきた。記者が3月、再び取材で訪ねると、中心メンバーの駒ア佳之さん(50)に打ち明けられた。「4月以降、活動を続けるかどうか分からないんです」

 標高約400メートルの山間地にある上針畑地区は人口88人、65歳以上の割合39%(1月1日現在)と過疎高齢化が進む。「古い地縁や血縁では、もう地域を支えられない」。送迎は新住民のそんな思いから始まった。診療所2階を利用して語らいの場とするサロン活動も生まれ、共にお年寄りに喜ばれていた。

 しかし、地元住民の一部からサロンに難色を示す声が上がった。「患者がいるのに2階で騒いだり、診察の横で昼食の煮炊きをするのは具合が悪い」と住民の一人は話す。

 実際は受診するお年寄りの多くがサロンに参加し、医師も介護予防になると賛同していた。「週1回の診療日を利用して、閉じこもりがちなお年寄りに外出の機会をと思ったが」と新住民の一人は言う。サロンは結局、会場変更を余儀なくされた。

 新住民の間でも、活動に温度差が生まれていた。

 この3年間で複数の家族や単身者が移住してきた。当初からのボランティア山本利幸さん(44)は「新しく来た人たちにも積極的に参加してほしいが、取り組みの経緯や趣旨が十分理解されていない」と話した。活動を支えるのは発足時の5、6人に限られ、負担が重くなっていた。

 活動をやめてしまうのか。3月末から、新住民を中心に話し合いが続いた。

 駒アさんは、「続けたい」とは言わなかった。一部の熱意だけで活動しても長続きしないと思ったからだ。その代わり、こう説いた。「上針畑はこれからも過疎高齢化が進む。誰もが一人では生きていけない。みんなで新しい支え合いの形を作らないと」

 4月下旬。3人のお年寄りが、ボランティアの車で診療所にやってきた。話し合いの結果、活動の必要性が再認識され、新たなメンバーも加わったのだ。利用者の家本たけさん(77)は「足が弱って、自転車ではこけるのが恐ろしい。若い人に助けてもらってます」と笑顔を見せた。

 駒アさんは振り返る。「送迎やサロンを通して、接点のなかったお年寄りと親しくなれた。新たなコミュニティーの力は、東日本大震災のような災害時や、僕たちが年老いた時にも生かされるはず」

 過疎高齢化は全国の都市部でも進んでいる。人と人のつながりを結び直すのは容易ではないが、今こそ各地で求められているように思える。=第5部おわり

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【2011年5月9日掲載】