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(4)当事者同士が話せる場所

ステップアップのきっかけに
うつと向き合う者同士だからこそ、胸の内が明かせる「うつコミュニティ」のグループセラピー(10月18日、京都市中京区)

 妻子ある三十代男性が、声を振り絞って自己紹介を始めた。「まさか自分がうつになるなんて思いませんでした…。次の仕事が見つかるか心配です」

 十月中旬、京都市中京区であった「うつコミュニティ・グループセラピー」。自由参加で悩みや近況を話し合う。約二年前から毎月一回、数人から十人ほどが出席する。大阪でも開いている。

経験者が主催 悩み話し合う

 主催は、NPO法人うつコミュニティ(東京都)。自身がうつで関連の著作もあるジャーナリスト上野玲さん(46)が代表だ。「うつの人が自ら語ることで、自分自身と向き合うきっかけになれば」と立ち上げた。

 冒頭の男性が発症したのは、昨年。職人として二十年間身を置いた業界は不景気の一途で「受注が減るだけでなく、商品チェックもあら探しのようになった」。退職したが、次の仕事を探す気力がわかない。「男が嫁さんに食わされてどうするんだ」。義父の言葉が追い打ちをかけた。

 隣で耳を傾けていた高齢の男性が「今が、精神的に一番大変だろうな」とねぎらった。

 うつに悩む仲間同士だからこそ、共感し合えることがある。九月の例会には働き盛りの男性七人が参加した。精神的な不調に陥った理由に、いずれも職場の人間関係、過重労働を挙げた。

 流通業勤務で、休職中の男性(42)は「仕事がアップアップだったところに上司が代わって相性が合わず、体調が限界を越えてしまった。あの忙しい職場に戻るかと思うと気が遠くなりそう。ここ以外にうつについて話せる場はありません」。心情を吐き出した。

 ボランティアで世話人を務める上京区の女性(31)は「多くの人が仕事に追いまくられている」と感じる。自身もうつに向き合った経験を踏まえ、「この場所が外出できるきっかけになり、さらにステップアップにつながれば」と期待する。

ストレス対処術 専門家に学ぶ

 専門家から、うつの一因となるストレス対処術を学ぶ場もある。  民間の支援組織「京都労災職業病対策連絡会議」などは五年前から毎月、京都市中京区のラボール京都で「メンタル労災交流会」を開いている。仕事上の悩みからうつを発症した人が集う。

 産業カウンセラーが司会を務め、精神的な不調と関係があるとされる完璧主義や固定観念にしばられないようアドバイス。精神的なゆとりをもって職場復帰できるよう目指す。

 京都市の会社員(55)は休職から復帰し、一年半。半年前から参加し、「他人との比較に苦しみ、休職を繰り返したが、メンバーの姿に接して少しずつ前向きな考え方をすればいいんだと気付いた」という。「仕事をずっと続けたい」。その思いが支えになっている。

メモ

「うつコミュニティ・グループセラピー」 次回は京都が11月15日に京都市中京区の中京青少年活動センター。大阪は同3日、大阪市北区の北区民センター。いずれも午後2時開会、参加費500円。問い合わせは電子メール、kimgets666zeus.eonet.ne.jpへ。

「メンタル労災交流会」 次回11月15日午後1時半から。参加費500円。要予約、事前面談あり。TEL075(803)2004。

【2008年11月2日掲載】