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(5)将来の不安に押しつぶされそう

派遣社員、休職したら生活できない
携帯電話の待ち受け画面に載せているミキさんの飼い猫。病気でも必死で生きようとした姿勢に、励まされたという
 働く人が「うつ」になったら、まず休養が求められる。しかし、派遣やパートなど非正規雇用労働者の場合、休職や長期休暇の取得が難しいのが現実だ。

 「仕事を休んだら、『クビ』になりかねない。労働契約や身分の不安定さが将来への不安に直結し、メンタル不全の引き金になる例も」。非正規労働者の相談に応じる「きょうとユニオン」(京都市南区)の玉井均書記長(55)は指摘する。

 派遣先との雇用契約を打ち切られた女性派遣社員は、撤回を求めた交渉中にパニック障害を起こした。製造現場で大けがをして腕に障害が残った男性は、心身ともに衰弱しきった状態で駆け込んできた…。言いたいことが言いにくい弱い立場だけに「心の問題が相談の多くに絡む」と、玉井さんは感じる。

こっそり薬服用 相談もできず

 「いつ『いらない』と言われるか。この先どうなるんだろう」。大阪府内のミキさん(41)=仮名=は二年前うつを発症した。一人暮らしで、三十代半ばから派遣社員。この立場で働き、生活を続けることで将来への大きな不安に襲われた。

 現在の派遣先は半年前から。症状は隠しているが、正社員と机を並べて事務をし、同じように結果を求められる。残業もする。

 交通費は自腹で、ボーナスなし。手取りは二十万円に満たず、昇給もなしに等しい。貯金もままならない待遇なのに、上司に「会社に貢献してほしい」と言われた。強い違和感をもったが、何も言い返せなかった。

 「医師に『休養が一番』と言われたけど、働かないと生活できない」。辞めてすぐ、次の派遣先が決まるとは限らない。正社員として働きたいが年齢、性別などの条件を考慮すると、かなり難しい。

 勤務中に気持ちがざわつくと、こっそり抗不安薬を飲む。「うつだと知れたら偏見を持たれ、契約更新に不利になるのでは」との気持ちがぬぐえず、派遣会社のメンタルヘルス相談窓口に頼る気はない。

 昨年、症状が悪化した際は勤めを辞め、1DKの部屋に引きこもった。実家の父にうつと一人暮らしのつらさを訴えた。わかってもらえず、逆に、「老後の面倒をみてくれるのか」と返されて食欲は失せ、泣き暮らした。

 「死」の文字が本やテレビから飛び込んでくる。ホームで電車を待つ間、飛び込むことを想像して震えた。飼い猫までも重い病気になった。

飼い猫の姿に自分を励まし

 立ち直るきっかけは猫だった。弱っても必死にえさを食べようとする姿に、生への執念をみた。「わたしも負けられない」。今も不安は消えないが、経済的にぎりぎりの中、自らを奮い立たせる−。

 国の調査によると、いまや非正規雇用労働者が全労働者の三割強を占める。玉井さんは「職を転々とせざるを得ない非正規労働者は孤立しがちで『大丈夫?』と声を掛け合える環境でない。雇用の安定を保障することで安心して人間関係がつくれ、将来設計できるはず」と問題提起する。

メモ

派遣社員など非正規労働者の主な相談先
「アルバイト・派遣・パート関西労組(派遣パートユニオン)京滋支部」=京都市下京区=TEL075(343)3003。sodan@mu−keiji.gr.jp
「きょうとユニオン」=南区=TEL(691)6191。kyotama@mbox.kyoto−inet.or.jp

【2008年11月16日掲載】