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(5)デイケアで社会性を取り戻す

家と職場の間 「段差」を埋める
(上) 毎日顔を合わすデイケア利用者たち。たびたび笑顔がこぼれる。「出世が命だったが、今はサラリーマンとして完走することに重きを置くようになった」。一人は心境の変化を打ち明けた(3月2日、宇治市五ケ庄・宇治おうばく病院「バックアップセンター・きょうと」)
(下) 復職支援プログラムがある主な機関

 うつ病などによる休職から、いかにスムーズに職場復帰し、再発を防ぐか−。事業所や当事者が直面する課題に対し、復職に向けた訓練を積む「デイケア」が注目されている。

 京都の病院で唯一、復職トレーニング専門デイケアを設けているのが宇治市の宇治おうばく病院だ。自宅での静養と多忙で人間関係が複雑な職場との「段差」を埋める場所で、毎日定時に通うことで生活リズムを整え、ストレスを感じやすい考え方の癖を修正する認知行動療法も行う。

自ら頭を使う 「いい訓練」に

 デイケアは午前九時に始まる。三月のある日は三十−五十代の十五人が参加。体操、朝礼、散歩とこなした。その後、利用者はペアとなり、互いの趣味や家族構成を質問し、相手の人物像を発表した。それを撮影した映像を見ながら改善点を指摘し合う。人前で話す勘を取り戻し、他者とのかかわり方を客観視するのが狙いだ。

 午後は個別メニューをこなした。休職して一カ月の設計技師の男性(33)は本の要約にトライしたが、何度も席を立ってしまう。「集中力が続くのは十五分程度。リズムになれるのに精いっぱい」

 再休職から復職間近の営業職男性(33)は「卒業発表」の準備を進めた。テーマを決め、インターネットで情報収集し、文章を練る。「自宅にいたら寝転がってテレビを見ていたはず。仕事でしか力は戻らないと懐疑的だったが、自ら頭を使うことを要求され、いい訓練になった」と、生き生きと語った。

 同病院のデイケアは二〇〇六年二月の開設以来、延べ約百五十人に利用され、うち七割近くが職場に戻った。

 デイケア担当の臨床心理士、片桐陽子さん(36)は「仕事が原因のメンタル不全者が長期休職で失った社会性を取り戻せる場所がなかった。利害が絡む人間関係がなく、気持ちを開ける場は再発を繰り返す患者に不可欠です」と力を込める。

従来の働き方 見直す場に

 事業所の中でも、宇治市は職員のメンタルヘルスケアプランにデイケア活用を盛り込む。「デイケアを利用した人は復職率が高く、行ってよかったという声が多い」(職員厚生課)

 独立行政法人「高齢・障害者雇用支援機構」も、各都道府県の障害者職業センターに「リワーク支援」と題した同様の復職支援プログラムを設けている。会社員だけが対象で、利用は無料だ。

 京都のセンターは下京区のJR京都駅近くにあり、常時五、六人が参加する。新聞要約やパソコン入力などの個別作業をはじめ、ウオーキングやグループセッションがある。  期間は通常約三カ月間。利用には事前相談に時間をかけ、主治医と勤務先に知らせることが条件だ。それにより、人事担当者らと回復過程を共有できるのも、デイケアの役割の大きな柱だ。

 主任障害者職業カウンセラーの芝岡直美さん(47)はいう。「これまでの働き方を見つめ直す場所にしてほしい。そんな機会がないと、また同じように発症するおそれがある」

【2009年3月8日掲載】