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(6)一般・産業医と精神科医が連携模索

早期対応で重症化防ぐ
京都の産業医や精神科医がメンタルヘルス対策の事例を基に課題や対応策を話し合った研究会(2月14日、京都市中京区)

 精神科以外の一般診療科(内科など)医師の七割近くが、うつ病やうつ状態が疑われる患者を経験している−。こんな実態が、滋賀県大津健康福祉センター(大津市)の調査で明らかになった。

 うつ治療に関する調査で、二〇〇六年十月に自殺予防対策の一環で地元の開業医を対象に実施。うつ病は頭痛などの身体症状を伴うが、患者の多くがうつ病を自覚せず、身近な医院を受診していることが裏付けられた。

 その際の医師の対処では、「精神科医など専門医を紹介」は17%にすぎず、「自分で抗うつ剤などを投薬した」が33%で、「経過を見た」も31%あった。

 「早期対応と重症化防止のためには、一般診療科医と精神科医の連携が必要」と同センターは結論づけた。連携構築に向けて、大津市医師会員や精神科医、大学教授らが検討を重ねた。一般診療科医向けの研修会も開き、交流を深めた。

双方の役割 システム化

 「一般診療科医がうつ病を発見する目を養い、手に負えなければ専門医につなぐ。軽い治療なら自ら試みるようにしたい」。検討委員会をまとめた市医師会副会長の饗庭昭彦医師(51)は話す。

 調査から三年目の昨年秋に誕生したのが連携システム「大津G−Pネット」。GとPは一般診療科医と精神科医の頭文字を指す。

 働き盛り世代のうつ病患者を対象に、一般診療科医が精神科医へ紹介しやすいよう、双方の役割分担や説明事項をなどを冊子にまとめ、精神科医療機関の連絡先を一覧表にした。「診療情報提供書」の書式も定めた。

 うつ病患者対策の医師間連携システムは大阪府や静岡県であるが、全国的に珍しい。饗庭医師は「研修を継続し、仕組みを活用したい。結果的に自殺予防につながれば」と期待する。

研修会設け 本音やりとり

 患者寄りの主治医(精神科医)と、事業所寄りの産業医。精神科医は医者の中でも交流がない−。両者にある「壁」がよく指摘される。例えば、休職している従業員の求めに応じて主治医が「復職可」の診断書を書いたのに対し、産業医が「安易に診断書を出している」と不信感を抱く。

 こんな壁を越えようとする動きの一つが「京都産業医メンタルヘルスネットワーク研究会」だ。精神科医で京都文教大の島悟教授(57)の呼びかけで〇七年十二月に発足。第三回会合が今年二月中旬、京都市中京区のホテルで開かれ、精神科医や産業医ら約三十人が参加した。

 テーマは「自殺の事後対応」と「新型うつ病」で、医師の事例報告を受けて議論した。多くの医師が新型うつ病の対応に苦慮していることをもらし、「会社は早期退職を勧めている」「どこまでをうつ病を認めるか」などの意見が相次いだ。

 呼びかけ人の一人、京都工場保健会(中京区)の森口次郎・診療所副所長(42)は「産業医と精神科医が本音でやり取りできれば、結果として適切な対応ができて、患者のためになる」と話す。

 大津や京都で医師たちは「顔の見える関係」を模索している。

【2009年3月15日掲載】