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(8・完)同僚・上司の理解で現場復帰

職務軽減し、病気の認識を共有
放課後の校舎で、同僚と一緒に生徒の車いすを修理する男性教諭(手前)。手に力がこもる。「同じ悩みを抱える人がいる。自分も再発するかもしれない。みんなが働きやすい職場になれば」

 春。生徒たちが体育館で卒業証書を受け取るのを見て、一人一人のがんばりが胸に迫った。もう一つ、小さな喜びがこみ上げた。

 「二度と働けないと思っていたから、子どもたちの笑顔を見られ本当にうれしかった。仕事が好きなんだともう一度実感できた」

 京都府南部にある府立の養護学校教諭シゲオさん(52)=仮名=は、うつ病による約一年半の休職から復職して丸二年。穏やかにはにかむ。

 同僚の相談には必ず耳を傾ける頼りにされる存在で、人望が厚かった。だが、課題の多いクラス担任を引き受けたのを機に、休職に追い込まれた。

病院の説明聞き 客観的に判断

 民間企業と同様、学校現場のメンタルヘルス問題も深刻だ。うつ病など精神疾患による公立学校教職員の休職は二〇〇七年度、全国で約五千人と過去最多となった。

 シゲオさんの勤務校でも以前から休職者が相次ぎ、退職者も出ていた。同僚教諭(54)は「仕事を無事に続けられるか、誰しも恐怖心がある」と打ち明け職場の助け合いの大切さをかみしめる。

 「休職者の仕事に対する願いに確信が持てるなら、それを信じて応援する」。休職当時の副校長(57)は、シゲオさんが復職トレーニングに通っていた病院を同僚と訪れ、臨床心理士らから本人の様子を聞いた。「どこまで仕事を課していいのかを客観的に判断できた」といい、本人が早期復帰を希望するのを押しとどめた。

 数日後、職員会議で回復程度について「専門家は大丈夫と言っているが、一定の配慮が必要。ご理解をお願いしたい」と説明し、復帰後のサポートの必要性を訴えた。

 経過の公表はシゲオさん自身が要望した。「心の病気だからこそ、できる・できないの境目が周囲には見えにくい。それを自己開示したうえ、無理をしないことが患者の役目」との思いがあった。

 復職後は、それまでの経験を生かせるクラスを受け持った。進路指導や研究など、担任以外の業務は免除された。三カ月間は非常勤講師の助けを借り、通院や早退のほか、校内の休憩室で休む時間が確保できた。

みんなの問題 モデルケースに

 職務軽減ができたのは、同僚たちの後押しも大きかった。職場の衛生委員会は「今後のモデルケースに」と意気込み、どの業務から外すのかを明確にしようとした。「配慮する」だけにとどまらず、具体的で組織的なフォローを目指した。

 同僚の一人は「勝負どころは『うつ病は誰でもかかりうる』との認識を職場で共有できたこと」と振り返る。

 かつて、体調不良で教室で座り込んだこともあったシゲオさん。いまは無事に仕事を続けている。支えてくれた職場の仲間への感謝の気持ちを伝えようと「報告文」を配った。

 「同僚、上司の先生方に支えていただき、気遣い、助言をもらいました。それらに頼ることができたので、病気に逃げ込まずに済み、現実に直面するだけのゆとりを一定保てたのだと思います」

【2009年3月29日掲載】