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(上)公的支援で収入の不安和らげる

傷病手当金や失業給付のポイントは

 うつ病などのメンタル疾患で長期休職や退職すると、収入面の不安がのしかかる。十分な静養期間を得て復職への意欲を持ち続けるには、公的支援制度の活用が欠かせない。第三部「再起に向けて」の初回は、「傷病手当金・失業給付」のポイントを整理した。

 健康保険で支給する「傷病手当金」は、病気やけがで働けず賃金が支払われなくなってから最長一年半、収入の三分の二を保障する制度。とりあえず収入面に安心が得られる。

支給開始後は 退職しても継続

 休職前に診断を受けて「休養が必要」との診断書を添え、勤務先に申し出る。健康保険組合など保険者に直接請求もできる。支給開始後は退職しても継続されるが、退職前の一年間、同一の勤務先に在籍していることが条件。退職後の診断で請求しても支給されないので注意が必要だ。

 「会社は退職が視野に入る従業員に冷たい。制度の知識や支援がないとあきらめてしまいがち」。社会保険労務士らでつくる労働者支援のNPO法人「あったかサポート」(京都市下京区)常務理事の笹尾達朗さん(57)は指摘する。傷病手当金は健康保険に加入できれば、非正規労働者でも支給される。

 製造現場で働く三十代の派遣社員男性は、雇用期間満了間際でうつ病になり休職。派遣元企業の健保組合に加入しており、傷病手当金の支給を請求したが、無視された。社会保険事務所に相談しても「企業の健保組合は管轄外」と言われ、労働基準監督署でも助言はもらえなかった−。

 相談を受けた笹尾さんが会社に連絡すると一転、手続きを始めた、という。「権利を正当に主張する支援団体や法律家の重要性が高まっている」と実感している。

 退職後に病状が回復し、職探しの段階になると、傷病手当金は受給できなくなり、雇用保険の「失業給付」に移行する。三月末には「雇い止め」対策として非正規労働者の保険加入の要件となる雇用見込み期間が「一年以上」から「半年以上」に緩和されたばかりだ。

 ただ、失業給付は傷病手当金よりも手続きが煩雑で、給付の額や日数も条件に応じて細分化されており、入念な対応が求められる。

離職理由違えば 異議申し立てを

 ポイントは、退職時に会社側から離職票を確実に発行させ、雇用保険の窓口となるハローワークで手続きを済ませること。その際の注意点は二つある。

 (1)退職後も傷病手当金の受給を続ける場合は、失業給付の支給期限となる「受給期間」(通常一年)の延長を申請し、就労できる段階になってから失業給付に切り替える。

 (2)会社側が離職票に記した離職理由が違うと思えば、異議を申し立てる。「自己都合」と書かれても、病気の原因が長時間勤務やセクハラ、パワハラに発するケースもあるからだ。「自己都合」では三カ月間給付がなかったり、給付日数が短くなるなど不利益がある。

 労災を申請をする選択肢もあるが、認定には長期間を要する。笹尾さんは「傷病手当金や失業給付を受給しながらでも申請できる」と念押しし、結論を待つ間の生活保障として、これらの制度活用を勧める。「立場の弱い人こそ自らの権利に敏感になって。自分を守るすべになるから」

図:休職・退職時に活用できる社会保険の流れ

【2009年4月18日掲載】